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2021年9月 9日 (木)

ESG投資が変える社会 ⑦

続き:

三つの資本主義

 中国について日本の運用機関は、時に、まったく違う景色を見ていることがある。彼らの目は、上海や深圳を中心にした資本市場の活況に向いていることが多いのである。

 クレディスイスが2020年に公表したレポートによれば、100万ドル以上の資産を持つミリオネアの数は、2019年末時点で、アメリカが約2000万人で世界一位だが、中国が約580万人で二位、日本は約330万人で第三位だった。また資産5000万ドルを超える超富裕層の数は、アメリカが約89000人で一位だが、中国が約21000人で二位、日本は約3000人で八位である。

 実際、IT・デジタル分野や電気自動車、太陽光パネルなど、多くの分野で中国企業の躍進を見聞きすることが多い。その意味では中国は極めて有望なビジネス相手に見える。中国型の「国家資本主義」は、かなり上手くいっているということである。

 世界経済フォーラムは2020年に「ダボスマニフェスト2020」を打ち出し、株式利益の最大化を唯一の行動原理とする株主資本主義には弊害が大きいので、企業を社会からの負託に応えるものと捉えるステークホルダー資本主義に転換すべきだと訴えた。その主張は賛同を集め、多くの企業や投資家が自社の Purpose(目的・存在意義)を口にし始めた。

 だが、ダボスマニフェスト 2020を提起した際、世界経済フォーラムの提唱者のクラウス・シュワブは、国家資本主義というもう一つの類型があることも指摘した。その本質は国家による統制である。経済や社会の方向は国家が決める。その代わり、その統制に服従する者には生活の安寧と経済的な繫栄を保証するということだ。実際、その体制が富と安定をもたらしている北京や上海などでは、人々は国家の統制を受け入れているように見える。

 このような国家資本主義の性質は、統制を強めるウイグル自治区の問題と裏腹である。不当な拘束や強制を受けない、、人種や性別で差別されないといった人権の概念が「サステナビリティ」の不可欠の一部であるとすれば、どんなに経済的に発展し、ビジネス上の魅力があるとしても、人権侵害を見過ごしてはならないだろう。世界的に見てきわめて磁力の強い国家資本主義とどう対峙するのかを考えなければ、真に資本主義と社会の未来を語ることはできない。

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