人間と科学 第326回 植物と薬と人間 (4) ③
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それを、現代の私たちは燃焼して、その過程で生じたエネルギーを生活に利用している。つまり、現代の私たちは、太古の時代に降りそそいだ太陽エネルギーから、当時の植物などが上手に蓄えてくれたエネルギーと資源を一方的に浪費し、それによって、二酸化炭素の増加と温暖化という生存に関わる重大な危機を自らもたらしている。このように見ると、現代人は、先祖が蓄えておいてくれた大切な遺産を食い潰すだけでなく、遺産を食い潰した揚げ句に出た排出物に埋もれ、瀕死の状態にいるとんでもない放蕩息子か末裔のようにも見える。
それでは、この問題を解決するにはどうしたらいいのだろうか?あるべき未来は、まず、石油や石炭の燃焼による二酸化炭素の排出を止めることである。このため、化石燃料の浪費は、地球の炭素循環が可能な範囲までの最小限に抑えなければならない。しかし、現在、化石燃料に依存している人間活動を止めることはできないので、化石燃料の代わりに、現存の植物などの光合成機能を今よりも増強して利用することが必須である。地球上の植物は、降りそそぐ太陽エネルギーの 1%くらいしか利用していないとの試算もあるので、この効率を上げる余地は十分にある。
それが実現すれば、炭素化合物とそれに伴うエネルギーは、完全に循環型に移行し、二酸化炭素の排出と吸収はその収支がゼロに抑えられ、地球温暖化に歯止めがかかると同時に、人間の生存を支える活動はその循環の中で行われる。
このように、地球人口が恒常的に増加している中で、あるべき未来の持続可能な発展に向けて、炭素の循環型社会に移行するためには、自然科学だけでなく様々な分野の努力が必要。しかし、この植物が有する光合成や物質生産機能を最大化することは、間違いなく最重要課題である。
ファストフード店で緩やかな人の流れを眺めながら、元々は植物が生産したエネルギーを摂取して、満腹感を享受しながら考えるのである。
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