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2021年9月 6日 (月)

ESG投資が変える社会 ④

続き:

政策的推進の動き

 ESG投資やサステナブル金融は国連や国際機関が原則等を掲げて推進してきた面はあるが、それらは強制的なものではなく、基本的には個々の機関投資家や金融機関が自主的に取組んできた。だがEUは、これを政策的に推進し始めた。

 EUの行政機関にあたる欧州委員会は2016年末に「サステナブル金融に関するハイレベル専門家グループ(HLEG)」を設置。2018年1月にその最終報告書が提出されると、2018年3月には欧州委員会としてのサステナブル金融に関するアクションプランを公表した。それに基づき、2019年末には金融機関等を対象としたサステナビリティ関連開示規則 (SFDR) を策定、サステナビリティ・リスクについての方針や、サステナビリティを標榜する投資信託の内容等の開示を義務付けた。

 また、サステナブルな経済活動とは何かを明確にするために、EUタクソノミーの策定も進めてきた。タクソノミーとは元来は生物学の用語で分類学や分類法を意味するが、EUタクソノミーはサステナビリティに資する経済活動を定義し、分類することで、資金を動員することを意図する。

 2020年には環境に関する6つの領域でタクソノミーを作ることなどを定めた枠組み規則が成立し、2021年4月にはそのうちの「気候変動の緩和」と「適応」の 2つについt、欧州委員会が具体的なタクソノミーを委任規則( delegateed act) として策定・公表した。

 一方、日本でも金融庁が2020年12月にサステナブルファイナンス有識者会議を設置、半年間の集中的な検討を経て2021年6月に報告書を公表した。その中では機関投資家がESG要因を考慮することは受託者責任の一部であると明言し、サステナブル金融を政策的にも推進する姿勢を明らかにした。

 有識者会議が設置された直接的な理由は、2020年9月に、菅総理が2050年までに、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを宣言したことにある。その後、2030年に2013年度比46%削減との目標が示された。これらの目標を実現するためのロードマップはすでに多くの組織やグループが提案している。たとえばこの分野の研究者を中心にした「未来のためのエネルギー転換研究グループ」が2021年2月に公表したレポートでは、2030年に 再エネ比率 44%、電気自動車比率 20%、業務分野の建物のエネルギー効率 50%改善などの提案が示されている。

 そのための投資額を2030年までに 202兆円と試算、うち 51兆円が公的資金、151兆円は民間資金と想定している。

 気候変動への対策を投資に結び付けると経済成長の呪縛から逃れていないと感じる人もいるようだが、具体的に脱炭素社会を実現しようとすれば、これだけの資金が要る。それを市場で調達するためには、資金の流れをそちらに誘導する必要がある。サステナブル金融に注目が集まる直接的な理由はここにある。

 EU タクソノミーの策定が気候変動の緩和と適応から始まっているのもそのためである。

 

 

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