Science 口腔粘膜上皮性異形成病変に対する蛍光診断の有用性 ④
続き:
3. 5-ALA の口腔癌蛍光診断への応用
2013/07/01~2019/09/30の期間に鶴見大学歯学部附属病院口腔内科を受診し、臨床所見等から明らかに口腔癌と判断できる症例を除いた 48 例に対して、本法 (5-ALA)を用いた診断を行った(鶴見大学歯学部倫理審査委員会 承認番号 1049)。その結果、扁平上皮癌(20例)、上皮内癌(3例)に対しては感度 100%、特異度 100%であった。また、上皮性異形成病変 (19例)のうち赤色蛍光を示したものは10例で、その内訳は高度異形成4例、中等度異形成4例、軽度異形成2例であった。さらに、赤色蛍光を示さなかった異形成病変9例はいずれも軽度異形成であった。
このことから、本蛍光診断法は従来報告してきたように、初期浸潤癌や上皮内癌の検出に有用であるのみならず、口腔粘膜における上皮性異形成病変の検出・把握にも有用である可能性が示された。そこで、次に赤色蛍光を示した異形成病変と赤色蛍光を示さなかった異形成病変それぞれの代表的症例を供覧する。
図 6a(略)においては、右側舌縁に辺縁不明瞭な軽度の白色病変が認められるか、硬結等の所見なし、臨床所見からは白板症と考えられた。本病変に対して通法のごとくヨード生体染色法を行うと、白色病変部にほぼ一致して不染色域が認められ異型上皮の存在が確認された(図 6b 略)。さらに 5-ALA を用いた蛍光診断を行ったところ、同様に白色病変部にほぼ一致した赤色蛍光域が確認(図 6c 略)、同部のデジタル画像に対する色度分析の結果、病変辺縁部に比較して中央部でやや赤色蛍光が強いことが確認された(図 6c 略)。
病理組織学的には健康状態の粘膜よりフロント形成(正常上皮と異型上皮との明瞭な境界形成)を伴い、滴状の上皮脚を形成する萎縮性の異型上皮基底層では、濃染性でC/C 比(核と細胞質の面積比)の高い基底細胞様細胞の不規則な多層化と、一部の表層を除く上皮層全体に異型細胞が認められた。また、上皮下にはリンパ球を伴う間質反応に加え、一部リンパ球の上皮層内侵入等により基底膜構造の不規則化がみられるものの、明らかな浸潤像は認められず、高異型度異形成(高度上皮性異形成)であった(図 7 略)。 続く。
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