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2021年10月 1日 (金)

巨大IT企業の暴走を止める! ③

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■ 巨大IT企業 VS 規制当局の激しい闘い

 巨大IT企業は、まさにその「巨大さ」を力に、市場で独占的な地位を占め、新規参入者の排除・制限や、自社に優位な価格や条件の設定、さらには消費者に対する説明責任の欠如など、そのビジネス慣行が公正な競争を歪めていると各国でも問題にされてきた。

 米国では、バイデン政権誕生の前後から様々な動きが出てきている。巨大IT企業は反トラスト法(独占禁止法)に抵触するとして、訴訟や規制などを用いて規制当局・議会がGAFAを追い詰め、激烈な闘いが繰り広げられているのだ。

 6月11日、米国下院司法委員会は、巨大IT企業に「反競争的行為の責任を負わせる」ための5本の法案を発表した。FacebookがInstagramを買収したケースのように競争上の脅威の買収を禁じる「プラットフォーム競争機会法案」や、10億ドル以上の買収の場合、申請手数料を高くする「合併申請料近代化法案」、「プラットフォーム独占禁止法案」など、いずれも既存のビジネスモデルを大きく揺るがす内容だ。

 立法への準備はトランプ大統領時代から着手されてきた。2019年6月、司法委員会の独占禁止法小委員会はGAFAの最高経営責任者(CEO)の公聴会を開始。その後16ヵ月にわたる調査の結果、同委員会は2020年10月に調査報告書をまとめ大きな話題となった。報告書では「4社がデジタル経済市場で反競争的な方法により支配力を拡大しており、議会と反トラスト法当局の機能を回復させる必要がある」とした。今回の立法はこの結果をふまえてのことになる。

 もう1つ、米国内での特筆すべき動きは、2020年秋の大統領選前後からのGAFAに対する訴訟の波だ。2020/10/20、米国司法省は検索市場で自社サービスを優遇したとして反トラスト法違反でGoogleを提訴。2020/12/16、にはテキサス州など10州も広告で競合をは排除した件で同社を提訴。Facebookに対しても、2020/12/09、連邦取引委員会(FTC)とニューヨーク州など48州・準州・特別区の司法長官が、それぞれに反トラスト法違反で提訴した。2021年5月には首都ワシントンの司法長官が、外部販売者の価格を不当に制限したとして、やはり反トラスト法違反で、Amazonを提訴。

 GAFAへの「訴訟ラッシュ」の背景には、1本の論文がある。40歳の若手研究者ディーナ・スリニバサンによる「Facebookの反トラスト法行為」というものだ。大手デジタル広告企業の幹部社員だった彼女は、ネット広告の世界では、「FacebookとGoogleだけが勝ち組となり、それ以外の全員が負け組となる」という不公正・不平等な原理に気が付いた。

 そこで会社を辞めて、2018年に論文を発表した。広告業界内部にいた彼女の論文は、「インサイダー(内部者)からの告発」として脚光を浴びた。2020年には「なぜGoogleは広告市場を独占するのか」と題する論文も公表。現在の訴訟ラッシュのいずれのケースも、スリニバサンの論理や事例に基づく構成となっており、提訴の法理論的な根拠として参照されていることは間違いない。

 もう一人、GAFA規制の最前線で闘う若い女性がいる。6月15日、米連邦取引委員会委員長に史上最年少の32歳で就任した、リナ・カーンだ。パキスタン人の両親のもとにロンドンで生まれ、その後米国に移住した彼女は、エール大学法科大学院の学生だった2017年に発表した論文「アマゾンの反トラスト・パラドックス」で注目を浴びた気鋭の法学者。低価格化による消費者利益ばかりを重視する今の反トラストの枠組みでは、デジタル市場における寡占・独占が社会全体に与える悪影響に対処できないと主張。バイデン政権誕生後の2021年3月、FTC委員に指名され、議会の承認を得て6月、FTCの委員長に就任した。バイデン政権の注目人事の代表格だ。

 連邦取引委員会トップに、GAFA規制の急先鋒が就任したため、GAFA側は警戒を強めて、Amazonは6月30日、FTCに対し、カーンを同社に関連する独禁法調査から除外するよう求める嘆願書を提出した。米国巨大IT企業の独禁当局への「反撃」はさらに激烈化することは間違いない。

 

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