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2021年10月16日 (土)

公正な医療アクセス阻むグローバル製薬企業 ⑦

続き:

◉ 製薬企業の猛反発の中で

 米国が途上国支持に回ったことで、WTOでの構図は大きく変わり、最大の反対勢力はEUとなった。EUも国別に見れば、フランスやベルギーなどは賛成に近く、一貫して反対勢力を取り続けるのはドイツで有り、またEUを離脱した英国も強く反対する。EUは、理念としては「ワクチンは共有財」と掲げながらも、大手製薬企業の強力なロビイを受けている。欧州製薬団体連合会(EFPIA)は、5月6日の声明にて「バイデン政権による近視眼的で効果のない決定」と厳しい言葉で米国の「転向」を非難して、欧州は知財免除に続けるべきだと欧州委員会に釘を刺した。また特に中国やロシアのワクチン外交を意識する中で、EUの知財を守り抜く姿勢は崩れそうもない。この「本音と建前」の政治が続く限り、WTOでの議論が着地することはない。

 米国と常に歩調を合わせ反対してきた日本はどうか。米国の賛成が発表された後の5月下旬の国会審議で、日本の対応を問われた茂木外務大臣は、賛否を明確にせず、「日本が知財免除の議論に水を差すようなことはしない」と答弁した。いかにも玉虫色の表現であるが、米国の影響でその態度が軟化したことは事実である。

 当の米国では、製薬業界はバイデン政権に猛攻撃をかけている。ファイザー社はCEOのアルバート・ブーラは、自社ウエブサイト上に「ファイザー会長兼CEOから従業員への公開書簡」を発表した。政権の判断に反対する立場から、同社がこの間、どれだけ世界各国へのワクチン供給に尽力してきたかが述べられている。また共和党議員からもバイデン政権への反発は高まっている。中国との緊張関係も相まって、米国が構築してきた知的財産権システムが壊れることをこれら共和党議員たちは心底恐れている。

 今後、米国内では両勢力による攻防がさらに広がるだろう。また米国が賛成側に回ったものの、WTOでの議論はさらに複雑なものとなり長期化する見通しだ。過去40年かけて米国自身が中心となり構築してきた強固な知財システムや製薬業界の独占と競争のビジネスモデルは簡単には変わらない。国際社会は、ようやくそのスタート地点に立ったに過ぎないのだ。

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