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2021年10月24日 (日)

グローバル・タックス、GBI、世界政府 ①

上村雄彦(横浜市立大学教授)さんの小論を載せる 「世界10」よりコピーペー:

 2010年に斎藤幸平の著作『人新生の「資本論』がベストセラーとなっている。気候変動を始めとする地球の危機的状況を整理した上で、この危機に対応するためのSDGsやグリーン・ニューディールについて、その欠陥と欺瞞的にな使われ方を厳しく指摘し、さらに経済成長への志向そのものを否定し、脱成長を掲げている。

 これらの斉藤の議論の根底にあるのが、資本主義の否定である。各種の社会改良の議論やプログラムは、資本主義の維持を前提にする点で限界がある。何故なら、資本主義こそが気候変動や経済格差などの根本原因であり、ここに深くメスを入れずして現在の危機を乗り越えることはできないと指摘し、「脱成長コミュニズム」を唱える。

 それは旧来のソ連型の共産主義とは異なり、人々が生産手段を自律的・水平的に共同管理してコモンズを再建し、ラディカルな潤沢さを回復構想だ。具体的には、使用価値経済への転換、労働時間の短縮、画一的な分業の廃止、生産過程の民主化、エッセンシャルワークの重視等である。これらによって労働自体を魅力的なものにしつつ、結果として経済成長を減速させ、持続可能な経済・社会を実現することを目指すのである。

 具体的な事例として、市民の手によって管理された再生可能エネルギー、資本家や株主なしに労働者たちが共同出資して、生産手段を共同所有する「ワーカーズ・コープ(労働者協同組合)」、フランスの「気候市民会議」、デトロイトの都市農業、国家が押しつける新自由主義的な政策に反旗を翻す革新的な地方自治体である「フィアレス・シティ(恐れ知らずの都市)」としてのバルセロナ、「南アフリカ食料主権運動」などを挙げている。このようなローカルなプロジェクトがお互いにつながり、点が面になっていくことで、グローバルな革命が「下から」実現するというのである。フィアレス・シティのような革新自治体が国境を越えて連帯する「ミュニシパリズム」も近年台頭している。グローバル・サウスの国際農民組織である「ヴィア・カンペシーナ」には2億人以上の農業従事者がかかわっている。

 社会変革の原動力は、社会運動だ。斉藤は、マニュエル・カステルの「社会運動なしには、いかなる挑戦いえども国家の制度(中略)を揺るがすほどのものを市民社会から生み出すことはありえない」という言葉を引用し、その重要性を強調している。そして、最後に、わずか3.5%が変われば、社会全体が変わるとする研究を提示し、それを希望にして、読者に行動することを呼び掛ける。

 見事な構成であり、人類の生存危機を乗り越えるためには、小手先の対応ではなく、社会システムそのものの変革が必要であるとの主張に強く共感する。本稿では、斉藤と同じく「人新世」を人類の生存危機の時代と位置づけ、その意味を明確にするとともに、危機の原因をさらに深めたい。その上で、マルクスがめざしたという「地球をコモンとして管理する社会」の具体的な姿の描写を試みる。これらの議論を通じて、人類の生存危機を回避し、持続可能な世界を創造する鍵を浮かび上がらせたい。

 

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