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2021年11月13日 (土)

Science 脳機能からみた「咀嚼」~非侵襲的脳機能計測法 (fMRI)、視線計測法 (eye-tracking)を用いた新視点~ ⑥

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 さらに、M1およびACにおいては、最大握力の増加率と脳賦活量の増加率との間に、有意な正の相関が認められた。このことより、咬みしめに伴い最大握力が増加する際に、この3領域が関与していることが示唆された。

 M1の皮質脊髄ニューロンは直接、脊髄運動ニューロンへ投射していることが知られており、その促通は脊髄運動ニューロン興奮性を亢進し、それにより握力の増加が認められるとの報告ある。同様に、小脳も fMRI 信号の増加と握力の増加は相関が認められると報告されているが、小脳は M1 からの情報を受け、下行性に脊髄の運動ニューロン等に情報を伝達している。それゆえ M1 の「手の領域」と小脳における賦活は、咬みしめによって脊髄運動ニューロンの興奮性亢進を惹起する脊髄上位のメカニズムの一つであることが示唆された。

 また、CMAおよびSMAは、両手や異なる四肢の協調運動に関与している、高次運動野であると考えられている。さらに両領域における手および顔面の体部位再現には、かなりの重複が認められることも報告されている。

 これらの報告は、握りしめと咬みしめの同時施行の際にCMAおよびSMAの脳賦活量がより大きくなることが妥当な結果であり、さらにCMAおよびSMAは握りしめと咬みしめの相互作用の主要な脳領域であることを示唆している。一方、最大握力の増加率とCMAおよびSMAの脳賦活量の増加率の相関は認められなかった。

 マカクサルの研究から、CMAおよびSMAのニューロンは、M1の「手の領域」は、咬みしめ時にこの直接投射を介したCMA/SMAからの信号によって脳賦活の増強が生じる可能性が示唆された。

 この研究は、咬合機能と身体運動機能との関係に注目し、咬合における機能的意義が完全に明らかにされていない脳機能と関連づけて解析を行った。研究結果より、咬みしめが上肢筋筋力に影響を及ぼす一つの因子であり、咬合機能と身体運動能力は密接な関連性を有していることが明らかになった。また、その制御には上位中枢、特にM1、CMA/SMA、および小脳が関与していることが示唆された。

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