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2021年11月12日 (金)

Science 脳機能からみた「咀嚼」~非侵襲的脳機能計測法 (fMRI)、視線計測法 (eye-tracking)を用いた新視点~ ⑤

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4. 脳機能を介して「咬みしめ」が身体運動機能に及ぼす影響

 我々は重いものを持ちあげたり、大きな荷物を運んだりする際、咬みしめることを日常的に経験している。咬みしめるという行為は日常生活動作やスポーツパフォーマンスに影響することが考えられる。また、1970年代後半から、スポーツ医学の発展とともに歯学の分野でも、顎口腔機能と身体運動機能の関連性に関心が寄せられ、口腔内スプリントの装着による咬合位の改善によって筋力が向上すると、歯科医学や運動学など様々な方面から提唱されている。

 脊髄運動ニューロンの興奮性を表す指標として幅広く用いられている脊髄単シナプス反射(H反射)の変調を 観察した神経生理学的な先行研究から、両拳を握ることや、自分の右手と左手を組んで互いに引っ張るJendrassik 手技と比較し、随意性咬みしめによりヒトヒラメ筋H反射が著しく促通を受けることが明らかにされている。さらにその後の研究で、上位運動中枢である大脳皮質一次運動野が関与し、随意性咬みしめが上肢筋に促通を与えると示唆されている。

 しかし、上肢筋力発揮時に咬みしめに伴って脳活動パターンがどのように変化するのか、また脳のどの領域がその変化に関わっているのかはいまだ解明されていない。そこで、fMRIを用いて、咬みしめによる握力増大への影響と、それに関わる脳賦活部位について調べた研究を紹介したい。

 行動生理学的実験にて、最大握力発揮時に習慣的に咬みしめを行う被験者21名に対し、咬みしめ時における最大握力(咬みしめと握りしめの同時施行)を計測したところ、下顎安静位における(握りしめ単独施行)最大握力に比べ、有意に大きい(平均8%の増加)という結果が得られた。fMRIを用いた神経生理学的実験にて、①咬みしめと握りしめの同時施行(gripping with clenching : GwC)、②握りしめ単独施行(gripping without clenching : GwoC)、③咬みしめ単独施行 (clenching : C)の3条件下で脳賦活量を計測した。その結果、GwoC 条件およびC条件の脳賦活量の合計と、GwC 条件の脳賦活量の比較(握りしめ単独施行+咬みしめ単独施行 vs. 咬みしめと握りしめの同時施行)では、GwC 条件である同時施行時のほうが、左側一次運動野 (M1)の中の「手の領域」、左側帯状回運動野および補足運動野(CMA/SMA)、右側小脳前方部 (AC) に有意に強い脳賦活部位が存在した。

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