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2021年11月 9日 (火)

Science 脳機能からみた「咀嚼」~非侵襲的脳機能計測法 (fMRI)、視線計測法 (eye-tracking)を用いた新視点~ ②

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2.機能的磁気共鳴画像法について

 fMRIとは、MR装置を用いて脳を撮像し、脳活動と相関するfMRI信号の変動を計測する方法である。一般的なMRI撮影は、体内や脳内の解剖学的な形態情報が得られるのに対して、fMRIは、神経活動の亢進時にその部位で起こる局所酸素代謝や局所血流動体の変化による、わずかな信号値の増減をとらえている。つまり、脳活動の本体である神経細胞の電気的活動そのものを測定しているのではなく、脳の神経活動に伴う脳血流の変化の情報を取得していることに注意すべきである。

 具体的には、脳のニューロンが活動すると、エネルギー供給のために酸素と糖を代謝する。そして、それを補うために局所の血流量が増加。血流量の増加は、非磁性体である酸化ヘモグロビン濃度を増大させ、磁性体である還元ヘモグロビン濃度を減少させる。神経活動の亢進時には、脳組織の酸素消費により還元ヘモグロビンが増加、それで局所磁場が乱れるはずであるが、神経活動亢進に続いて局所脳血流が増大、脳組織の酸素摂取を上回る酸素が過剰供給される。

 

  blood oxygen-level-dependent (BOLD) コントラスト

  脳血流が動脈から流入する際は、赤血球のヘモグロビンが酸化している。

● : 安静時においても、脳組織は酸素を消費する。酸素消費後は、酸化ヘモグロビンが還元ヘモグロビンに変化する。

● : 神経活動時は、局所の脳組織における酸素やエネルギーの消費が安静時より増加するが、脳組織の酸素消費以上の動脈血の過剰流入が生じた結果、  

  相対的な還元ヘモグロビンの割合が減少する。

 

 従って、還元ヘモグロビンが相対的に減少し、局所磁場が安定することでfMRI信号が増加する。この性質は blood oxygen-level-dependent (BOLD) コントラストと呼ばれ、これがfMRIの原理となっている。1990年代の初めにfMRIが開発されると、当時の脳機能イメージングにおいて最も盛んであった、放射性同位元素で標識した薬剤を生体に投与して測定を行うポジトロン断層法(positron emission tomography : PET)に取って代わった。

 また、fMRI研究の結果でしばしば示される脳活動部位が色付けされた画像は、被験者に与えられた感覚刺激や行動課題に応じたfMRI信号の時系列変化が、刺激や課題施行の時系列とどれくらい相関しているかの統計値を局所毎(各 voxel 毎)に算出した上で、設定した閾値以上の voxel に色を付けて表示しているものである。さらに、近年 fMRI は単純な脳の機能局在の解明のみならず、離れた脳領域間の神経活動の相関の程度を基に、脳領域間の機能的な結合(連絡性)を調べることにも応用されるようになっている。

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