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2021年11月30日 (火)

内の目外の目 第226回 超高齢化先進地域から超高齢者の歯科医療を考える ④

続き:

◎超高齢者歯科の展望

 高齢者の健康・自立状態は、暦年齢が上がるほど個人差が大きい。自力で歯科診療所に通院できる高齢者は通常治療が可能。しかし、認知症のためにセルフケアや義歯の着脱ができなくなり、介助ケアが不十分になると、短期間で根面う蝕が多発して残根化し、咬合が崩壊する。たとえ8020達成後でも、人生の終末期に急速に歯を失うという現実がある。

 セルフケアができない患者では、高度な歯周炎や多数の根尖病変を含む残根が、全身へ影響を与える病巣感染源になりうることを考えると、歯を保存する意義をもう一度考える必要がある。従って、すべて抜歯し無歯顎にせざるを得ないこともある。

 このような場合は「無歯顎で生まれ、無歯顎で死ぬ」というパターンは必ずしも歯科の敗北とはいえないであろう。

 いわゆる高齢者歯科は、口腔機能維持により健康寿命を伸ばすリハビリ要素の強いものであるが、超高齢者歯科は「人生の終末期における口腔由来の感染予防と経口栄養摂取を維持しながら、平穏死が迎えられるようにお口を終わらせることを思考するもの」である。

 そこには当然、死生観が伴う。超高齢者は前期・後期高齢者と比較して、「老年的超越」により、身体機能の低下が心理的 Well-being(幸福感)の低下に及ぼす影響は小さいといわれている。超高齢者歯科では「治療」よりは「Comfort」を与える支援を考えるべきであろう。

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