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2021年11月16日 (火)

Science 脳機能からみた「咀嚼」~非侵襲的脳機能計測法 (fMRI)、視線計測法 (eye-tracking)を用いた新視点~ ⑨

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6. 将来的な臨床歯科および医学分野への応用の可能性

 歯科医師は、患者の歯を考えられうる最も適切な方法で治療したつもりでも、必ずしも満足のいく口腔機能の回復が得られないという事実に直面する場合がある。良好な咬合を有する健常者でも、顎顔面口腔領域の感覚運動のパフォーマンスには大きなばらつきがあり、解剖学的形態のみでは完全に説明できない。顎顔面口腔領域の感覚運動機能に関しては、額口腔系だけでなく、全身すべての感覚運動および認知神経機能を司る脳の変化も考える必要があるかもしれない。

 今回紹介しました研究においては、脳機能の観察を行うことで、既存のある側面(咬合接触面積等)にのみにフォーカスをあてた評価法とは全く異なり、臼歯、前歯の担う「機能」を包括的に評価できる新たな可能性が提示された。

 また、不正咬合や歯の喪失等による咀嚼機能低下や、その後の歯科治療による機能回復が、脳の運動制御機能を含め脳自体に与える影響が解明されれば、認知症等の脳疾患に対する治療を口腔機能の観点から支援することも可能になるうると思われる。さらに、脳機能から顎顔面口腔機能をみることで、四肢運動機能の向上や肥満予防のための食欲コントロール等、顎顔面口腔領域、特に「歯や咀嚼」が全身の身体機能へ与える重大な影響に対してエビデンスをさらに蓄積していくことができると期待される。

 このように、脳と額運動系の関係を解明することは、歯科医学の分野において理解を深め、臨床に応用され得るために重要であると思われる。しかしながら、脳機能計測や視線計測に限らず、今まで歯科医学の領域では馴染みがなかった研究方法は、方法論的および解釈上の限界があるため、脳を検索することばかりが先行して機能の本質を見誤ることがないように、十分な注意が必要であると思われる。

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