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2021年11月 3日 (水)

人間と科学 第328回 植物と薬と人間(6)―②

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 このように、SDGsが余りにも一般化したために注意を要する一面はあるにしても、この実現に向けては植物科学が貢献できる項目が多くある。具体的には17項目のうち、②飢餓をゼロに、③すべての人に健康と福祉を、⑦エネルギーをみんなに、そしてクリーンに、⑬気候変動に具体的な対策を、⑮陸の豊かさを守ろう、の少なくとも5項目に貢献できるだろう。

 つまり、地球上の植物の遺伝的多様性を大切にしながら、そのゲノムに秘められた能力を解明して、それを最大限に引き出し、食糧増産や医薬品の生産、二酸化炭素排出のネットゼロにつながるバイオマスエネルギー生産、二酸化炭素の吸収と資源化、気候変動による劣悪な環境に対する耐性作物、環境負荷の少ない低肥料で生育可能な作物などを実現することが、植物科学からのSDGsへの大きな貢献になる。

 植物は、太陽エネルギーを使って、空気中の二酸化炭素と土壌からの水や無機成分だけから、地球を汚さずむしろ浄化しながら、私たちの生活を支える食料や医薬品、エネルギーの元になる物質を作り出す、いわば「精密化学工場」である。この「精密化学工場」の機能を向上させるためには、まず根源的なゲノムレベルから植物を理解することが重要な課題だ。

 さらに、今後はゲノム編集や合成生物学、人工知能などの最先端科学によって、現生の植物が本来的に持っている能力を最大限引き出し、さらにそれを超える機能を付与して、目的に合わせて最適化することが期待される。長い歴史の審判に耐えて進化してきた植物を始めとして、地球上の多様な生命体の知恵を借りて、それを地球と人類のために役立てることが今後必要となる。

 特に、様々な形質の突然変異を人工的に交雑して、期待する形質を有する新たな品種を作出する従来育種が広く受け入れられ、その恩恵を享受していることを考えると、ゲノム編集という狙った突然変異だけを正確に引き起こすことができる新しい育種方法には、大きな期待が寄せられる。

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