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2021年11月24日 (水)

Clinical 次亜塩素酸のトリセツ ⑦

続き:

b) 非混和型:イオン交換による生成方法

  次亜塩素酸ナトリウム溶液をイオン交換膜に通して、ナトリウムイオンを可及的に除去するタイプで、pH調整剤を使用しないために純度が高く、高濃度への対応も可能である。NITEが消毒効果のあるとする有効塩素濃度35ppm以上において水道水質基準をクリアしているもの(=飲水用適)もある。遮光状態では比較的劣化しにくい。酸化力が強く殺菌能も高い反面、金属に錆や腐食が出やすい。専用の生成装置が必要、容器詰めとして供給される。

 

(2) 生成器不要の方法(電源不要)

 粉末溶解式で、次亜塩素酸塩+pH調整剤もしくは塩素化イソシアヌル酸塩の粉末や錠剤を水(水道水)に溶かすものである。高温多湿と直射日光を避ければ溶解前の粉末は長期間室温保管でき、保管場所に困らない。また、時間と場所、状況を選ばず必要量をオンサイトでオンデマンド生成(高濃度への対応が可能)するため、常にフレッシュなものを使用できる。

 次亜塩素酸塩+pH調整剤には、既販 ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム 粉末溶解 ⓫ (215ppm,pH6.0) と同じく 、粉末溶解 ⓬ (220ppm,pH6.0)がある。

⓫は既販で、⓬は最近製品化された新開発のものである。⓫も⓬もその生成物は副産物も含めて食品添加物で、過剰なpH低下も起こらない。⓬で生成したもの(50ppm以下)は水道水質基準51項目をクリアしている(飲水用適)。また、⓬は超硬水(硬度>1500mg/L)でも問題なく生成でき、世界中どこでも簡単に次亜塩素酸水を手に入れることができる。⓫の次亜塩素酸水(室温保管)は経時的に大幅に有効塩素濃度が低下したが、⓬ではあらゆる条件下で劣化が少なかった。

 歯科用切削スチールバー(炭素鋼製)を用いた錆発生テストでは、⓫は大量に錆を発生させたが、⓬は蒸留水よりも錆が少なかった。よりシビアな条件(8時間浸漬)においても同様だった。また、⓬を8か月間連続使用したスプレーヘッドの金属バネにおいても錆が認められなかった。他の金属についても、錆、変色、腐食を確認できなかった。このことは、金属を含む器具・器材などに問題なく使用できることを表している。銅系金属での結果は電子機器への使用において重要だ。空気洗浄としては、高濃度の 100ppmの⓬を通風気化式加湿装置にセットして1か月連続稼働させたが、装置に錆や腐食は認められない。また、⓬で生成した溶液を室温非遮光下で1か月放置した後に殺菌能を調べたところ、十分な殺菌能を示した。様々な器具・機器を使う医療・介護現場では、劣化しにくく錆や腐食を起こしにくい⓬が最適な選択となる。

 塩素化イソシアヌル酸塩は窒素を含む有機塩素化合物、殺菌特性はシアヌル酸(C3H3N3O3)の影響により遅行型で、速効型の「次亜塩素酸水」よりも低い。NITEの報告書では、新型コロナウィルスに有効な次亜塩素酸水の有効塩素濃度は35ppm以上、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムでは100ppm以上とされている。毒性は低いが、動物実験でいくつかの臓器への影響が報告。

 光(紫外線)に強くプールの塩素処理などに使用されるが、我々のテストでは錆を大量に発生させ、イオン交換型や 2液混合型の次亜塩素酸水よりも光で劣化した。塩素臭がかなり強いことも含め、医療や介護現場での使用は推奨しない。

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