Clinical 歯周病と関連する疾患 ~関節リウマチと EBV 陽性粘膜皮膚潰瘍~ ③
続き:
4) 歯周病と RA
RA 患者で歯周病罹患頻度が高いことはかなり以前から知られており、RA 診断の重要な指標となる抗CCP抗体が注目された来た。前述のごとく RA では、生体由来の PAD によって生成されたシトルリン化蛋白質に対して自己抗体が産生され、自己免疫応答が誘発されると考えられている。興味深いことに歯周病原細菌の代表である Porphyromonas gingivalis (P.g) は、PAD を産生する唯一の口腔細菌であることが報告されている。
また、Aggregatibacter actinomycetemcomitans (A.a) は好中球に作用し、PADを放出させることも示されている。初期の RA 患者でP.g に対する免疫応答が亢進している例では、その値と抗 CCP 抗体の値とが相関することが報告されているが、抗 CCP 抗体の値が高くても RA の症状が出ていない例も多く、歯 関節痛患者を「歯周病あり」と「なし」の2グループに分けて追跡調査を行い、歯周病を有する患者で関節炎の活動性が高く、後にRA と診断され、メトトレキサート(MTX)治療が導入される例が多いことを報告している。
一方、新潟大学のグループは、腸内細菌叢のバランスの破綻が様々な全身疾患の発症・進展を招く可能性に着目し、歯周病と関節炎との関連についての実験的研究を報告している。タイプⅡコラーゲンで免疫した実験的関節炎のマウスに歯周病原細菌を経口投与した研究では、P.g を投与した群において腸内最近の変動を認め、腸間膜リンパ節における Th17細胞の増殖・活性化の誘導、血中 IL17 (インターロイキン17)の上昇および関節炎の重症化を認めている。Th17 細胞は IL17 を産生する能力を有する、自己免疫疾患の病態形成に関与する T 細胞(Tリンパ球)である。すなわち、歯周病は、口腔だけではなく腸内細菌叢のバランスをも崩し、腸管免疫を介して RA を含めた全身の疾患の発症・進展のリスクとなる可能性を示している。
歯周病と RA の関係について、歯周病を有する RA 患者において歯周病の治療により歯周病が改善する例がみられることもあり、糖尿病との関連同様に双方向的である可能性が考えられる。
5) RAの治療
関節リウマチ治療の主体になるのは薬物療法である。抗リウマチ剤と非ステロイド性消炎剤を基本とし、症例によってはステロイド剤、免疫抑制剤、生物学的製剤が用いられる。抗リウマチ剤のうち、メトトレキサート(MTX)が中心的薬剤となっている。補助療法としてステロイド剤やヒアルロン酸製剤の関節内注射が行われることもある。リハビリテーション理学療法も有効とされている。
« Clinical 歯周病と関連する疾患 ~関節リウマチと EBV 陽性粘膜皮膚潰瘍~ ② | トップページ | Clinical 歯周病と関連する疾患 ~関節リウマチと EBV 陽性粘膜皮膚潰瘍~ ④ »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- ポストコロナ医療体制充実宣言 ①(2024.01.04)
- Report 2023 感染症根絶 ④(2023.11.30)
- Report 2023 感染症根絶 ③(2023.11.28)
- Report 2023 感染症根絶 ②(2023.11.24)
- Report 2023 感染症根絶 ①(2023.11.15)