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2021年12月11日 (土)

Clinical 歯周病と関連する疾患 ~関節リウマチとEBV陽性粘膜皮膚潰瘍~ ⑤

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3) EBV 陽性粘膜皮膚潰瘍の病理組織学的所見および診断

 形成された潰瘍下には異型リンパ球の増殖がみられ、その組織像はHodgkinリンパ腫あるいはびまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫 (DLBCl) に類似する。すなわち Hodgkin 細胞、Reed-Sternberg 細胞に類似する細胞がみられる例や、芽球化した大型細胞が目立つ例がある。免疫組織学的所見としては、B細胞のマーカーである CD20 、活性化 T 細胞/ B細胞のマーカーである CD30 および EBV に由来するタンパク質 LMP-1 (lymphocyte membrane protein 1) に対する陽性反応が異型細胞にみられる。また、異型細胞は、Ki-67 に対する陽性率が高く、増殖能旺盛であることを伺わせ、 in situ hybridization 法によりEBV の再活性化を示す EBER (EBV-encoded small RNA)が証明される。

 MTX などの免疫抑制剤や生物学的製剤を服用しているか否かは、診断にとって重要な事項。リンパ腫の既往を欠き、かつ医原性でなければ年齢を考慮の上、加齢性の範疇と判断する。

 本病変の概念がなかった頃は、おそらくその組織像から悪性リンパ腫として診断がされていたと推測する。事実、某学会でこの病変の一例を発表した際に質問者から悪性リンパ腫以外考えられないと食い下がられたことを思い出す。MTXによる医原性のほとんどの例は休薬あるいは減薬で自然消退し、予後は良好であることが報告されている。自然消退する悪性腫瘍はあり得ず、全身精査や治療歴を含めた臨床所見をよく把握したうえでの臨床病理学的判断が重要となってくる。

4) 歯周病原細菌による潜伏 EBV の再活性化促進メカニズム

 EBV 陽性粘膜皮膚潰瘍は、免疫低下により潜伏している EBV が再活性化することで異型 B リンパ球が増殖する疾患であるが、歯周病といかに関連するのであろうか。

 歯周病原細菌である P.g や Fusobacterium nucleatum (F.n) が代謝産物として産生する酪酸が、潜伏 EBV を再活性化することが認められている。酪酸はヒストン脱アセチル化酵素 (histone deacetylase : HAT) という転移酵素によるアセチル化で DNAーヒストン結合がはずれ、遺伝子発現が生じることができる。このアセチル化は HDAC により可逆的に解除、再び DNA はヒストンと結びつくことができる。歯周病罹患者の歯肉をはじめとする口腔局所においては、P.g や F.n によって産生された酪酸が持続的に存在し、DNA とヒストンとの再結合が阻害され、遺伝子発現がされやすい状況が生み出される。EBV は DNA ウイルスであり、潜伏していた EBV が免疫抑制剤や生物学的製剤による免疫低下で再活性化し、さらに歯周病があると歯周病原細菌の産生する酪酸によって、より一層 EBV の再活性化が促進されると考えられる。

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