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2021年12月 4日 (土)

人間と科学 第329回 医療統計学リテラシー(1) ①

新谷 歩(大阪市立大学大学院医学研究科医療医療管理医学講座医療統計学教授)さんの小論文を載せる コピーペー:

P 値と仮説の検定

 臨床研究、基礎研究を問わず、大切な研究結果をいざ世に送り出そういう時、統計解析で大変苦労した、査読者から「解析が間違っている」と指摘を受けて途方に暮れた、という経験を持つ方は多いのではないだろうか。近年多くの国際ジャーナルでは統計専門家による査読が行なわれ、統計をいかに適切に行うかが研究の質を決めると言っても過言ではない。

 

 たとえば「新薬で治療された10人の血圧は、既存薬で治療された10人と比べると平均で10低かった(P=0.35)」と記載があったとしよう。このPという値について、何となく小さいほうがいいのは分かるけど、なぜちいさいほうがいいのか分からないという人も多いのではないだろうか。

 そもそもP値とは何だろう。P値のPとは Probability(確率)の頭文字からきている。P値とは「本当に差がない時に、集めたデータで偶然差が出てしまう確率」を示す。

 前述の例におけるP値は、「本当は新薬の効果が既存薬と同じ場合、集めたデータでこれくらいの差が偶然出てしまう確率が35%くらいある」という意味だ。35%といえば、結構高い確率だ。つまりこれくらいの差は、差がなくとも偶然起こりうることであって、「このデータをもとに、差があると言えない」と解釈できる。

 次は、データを増やしてみる。すると「新薬で治療された100人の血圧は、既存薬で治療された10人と比べると平均で10低かった(P=0.01)」となった。今度は、「仮に、新薬と既存薬の効果に差がないときには、こんな差が観察される確率は1%くらいしかない」、つまり、この差は偶然起こるわけがなく、必然だった。「効果に差があったのではないか」と結論付けられる。

 P値とは、「偶然の確率」「まぐれ当たりの確率」さらに言い換えれば「データをもとに、差があると判断した時の間違いの確率」と読解する。間違いの確率が低ければ、データをもとに「差がある」といっても間違いでないので、「P値が小さければ小さいほど差を見るエビデンスとしては良い」というのは納得できる。

 医学・歯学分野の研究では、この「差がないのに偶然差が出る確率であるP値」が習慣的に5未満であれば、偶然ではなく必然、つまり「新薬と既存薬の効果に差があると言って良い」とされており、この差を「統計的に意味のある差、統計的有意差」と呼んでいる。

 P値は「差があるかどうか」を判定する仮説検定に欠かせない指標であるが、なぜ偶然の確率であるP値が重要なのか。次にP値についてくわしく理解するために、仮説検定について考えてみよう。

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