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2021年12月29日 (水)

人間と科学 第330回 医療統計学リテラシー(2)①

オッズ比とリスク比

新谷 歩(大阪市立大学大学院医学研究科医療統計学教室)さんの小論文 コピーペー:

 「がんに罹患した場合5年後に生存確率は何パーセント?」、「手術の成功率は何パーセント?」、「喫煙者の肺がんの発症率は?」など、臨床現場だは、確立や割合がよく用いられる。一方、研究ではリスクに変わりオッズ、リスク比に代わりオッズ比が多く用いられる。この正体不明のオッズとは何だろう。

 この聞き慣れないオッズとは、ギャンブルの世界でよく使われている。例えば、4人の男性がさいころを投げて、奇数が出るか偶数が出るかに一人100円かけたとする。

 偶数にかけた人の人数=3

 奇数にかけた人の人数=1

 オッズ=偶数にかけた人の人数 ÷ 奇数にかけた人の人数= 3÷1=3

 奇数者――かけた100円の3倍の儲け!  オッズとは?ギャンブルの世界で使われていた

太郎君は奇数に、他の3人は偶数の出るとかけた場合を考えてみよう。この場合のオッズとは、偶数にかけた人の人数を奇数にかけた人の人数で割ったもので、この場合は3÷1で3となる。太郎君が勝った場合は、掛け金の3倍、300円の儲けとなる。

 今度は太郎君を含めた 3 人が奇数に、あとの一人は偶数の目が出るとかけたとしよう。この場合のオッズは1÷3の 1/3 、奇数の目が出て3人が勝った場合の儲けは 100円× 1/3 の33円となる。ギャンブルを例にするとオッズの意味がよく分かる。

 

 臨床研究におけるオッズとは「イベントあり」の人数を「イベントなし」の人数で割ったものである。先の例の「偶数の目にかける」という行為をイベントと置くと、偶数にかけた人の人数を、そうでない、つまり、奇数の目にかけた人の人数で割ったものがオッズとなる。オッズ比とは比較したい群でそれぞれに計算したオッズの比となる。

 ここで、喫煙と肺がんの関連を調べた研究でオッズ比を計算してみよう。100人の喫煙者のうち、20にんが肺がんを発症し、80人が発症なし、もう100人の非喫煙群では10人が発症したとする。肺がんの発症率(リスク)は喫煙群では20%、非喫煙群では10%となる。リスク比は、その比をとって20/10=2.0 と計算できる。非喫煙者の発症率を 1と置くと、喫煙者は2.0、つまり喫煙によって肺がんの発症リスクが2倍になると解釈できる。

 一方、発症オッズは、肺がんが発症した人の数を発症していない人の数で割って得られる。

 喫煙群では肺がんの発症オッズは20/80、非喫煙群では10/90となり、オッズ比はその比をとって2.25と計算できる。

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