« 新自由主義から福祉国家へ ⑤ | トップページ | 新自由主義から福祉国家へ ⑦ »

2021年12月26日 (日)

新自由主義から福祉国家へ ⑥

続き:

 福祉国家では、貢献原則と必要原則がどう適用されるのであろうか。日本の現状とスウェーデンなどのヨーロッパ型福祉国家とを比較しながら考えよう。

 日本の労働者の現状では、基本的必要はどのように充足されているだろうか。生き方の個人差は非常に大きいので、以下の数字はあくまでも生涯支出と生涯賃金の基本パターンを理解するための大略の把握だ。現状では、平均的な日本人の生涯必要生活費はおよそ 2億円であり、年間支出額は教育費や住宅費が多くなる40代と 50代で最も多く、生涯を通じた支出曲線は山形のカーブを描いている。

 他方で、年齢階級別の賃金カーブは、雇用形態および性別で大きな格差がある。賃金水準の高いほうから順に見ていこう・最も賃金水準が高い男性正社員(正規雇用労働者)の賃金カーブは、50代をピークとして大きな山を描いている。その下の女性正社員の賃金カーブは男性正社員に比べてかなり低く、ゆるやかな山を描いているフラットに近い。男性と女性の非正社員(派遣やパートなどの非正規雇用労働者)の賃金カーブはさらに低く、20代でわずかに上昇したあと生涯を通じてほぼフラットである。

 このような賃金格差があるために、世帯所得では、男性正社員を構成員に含む世帯が高い所得を得ている。労働者一人あたりの生涯賃金は、男性正社員が約 2億円、非正規雇用労働者が約 1億円で、両者の差額は約 1億円ある。そのために世帯所得では男性正社員を構成員に含む世帯の生涯所得が約 1億円多くなる。

 この生涯所得の格差は、生涯支出にどのように反映されるであろうか。生涯支出または生涯必要生活費を考えるといには、通常の日常生活費と人生の三大支出との区別が重要である。人生の三大支出とは、教育費・住居費・老後生活費だ。日銀の金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査」(2016年)によると、人生の三大支出が何かを知っているこくみんは 47%だ。三大支出の金額は個人差が非常に大きいが、平均的には教育費・住居費・老後生活費のそれぞれに約3000~4000万円、三大支出の合計で約 1億円程度か必要とする。男性正社員の生涯賃金はおよそ約 2億円であるから、その半分の約 1億円が日常生活費で残りの半分の約 1億円が三大支出にふり向けられることになる。

 旧来のいわゆる男性稼ぎ主型の世帯では、夫が男性正社員で妻が専業主婦かパートなどの非正規雇用であり、生涯世帯所得で人生の三大支出をカバーすることが可能であった。しかしその後、旧来の日本型雇用慣行が崩れて男性の非正規雇用労働者が増加してきた。現状では、非正規雇用の男性と女性は生涯賃金が約 1億円程度であるから、単身であれ非正規雇用労働者どうしのカップルであれ、労働所得で人生の三大支出をカバーすることが困難になっている。その結果として非正規雇用労働者の非婚者が増えており、生涯賃金で人生の三大支出をカバーできない人々は、退職後に「家族なし・持ち家なし・老後生活費なし」の低所億高齢者になる可能性が高い。生活保護を受給する高齢者もかなり増えると予想されている。

« 新自由主義から福祉国家へ ⑤ | トップページ | 新自由主義から福祉国家へ ⑦ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

無料ブログはココログ

お気に入り