気候崩壊と脱成長コミュニズム ⑤
続き:
環境帝国主義か、反植民地主義か
注意してほしいが経済成長と二酸化炭素排出のデカップリングが起きないと言ってるわけではない。省エネ化や再エネ導入によって、デカップリングはすでに起きている。ただし、絶対的デカップリングがすでに起きている国でも(イギリス、スペイン、ルーマニア)、その割合は、3.4%ほどで、求められている割合である12%からは程遠い。だからこそ、欧州環境庁(EEA)の報告書も、環境保全と経済成長が相容れないということを認め、GND が「技術における変化だけでなく、消費や社会的振る舞いにおける変化」を引き起こさねばならないとし、脱成長を真剣に検討するよう求めている。つまり、「成長なきGND」が必要だというのである。
今後デカップリングは加速していくだろう。だが、2050までという短期間でネットゼロを実現するためには、経済成長はその足枷になる。経済成長を続ければ、その分より劇的なデカップリングが要請されるから。そのせいでメガソーラーが乱立しtら本末転倒だ。逆にフアストファション、SUV、工業的畜産業などの本来それほど必要ではないものを大幅に減少ができれば、環境負荷y二酸化炭素の排出量も削減できる。それが、脱成長の求める「消費や社会的振る舞いにおける変化」である。
また、再生可能エネルギーは資源集約的だ。太陽光パネル、風力タービン、バッテリー等を大量に生産するためにレアアースの資源採掘が強まることは避けられない。こうして、新たな採取主義か生まれるだろう。更に、需要増大によってレアアースの資源価格が高騰していけば、低所得国は脱炭素化を進めることができず、化石燃料への依存が高まっていく。それでは気候危機は止まらない。
さらに、IPCCのシナリオによれば、再エネや省エネ化だけでは不十分で、まだ開発途上の BECCS を中心としたネガティブエミッション技術を大々的に使用しなければならない。だが、バイオマス(BE)のためにはかなり農地面積が必要となる。IEA(国際エネルギー機関)の 1.5 ℃シナリオでも、2050年までにパキスタンとインドを合わせた面積に匹敵する 4.1 億ヘクタールが必要となると言われている。そのような耕作地はどこにあるのか?途上国からのランドグラビング(土地収奪)は避けられないだろう。
また、CO2 回収・貯留 (CCS)にしても、大気から吸収した二酸化炭素を貯めておくばしょのもんだいもある。それも途上国に押し付けるのか。こうして、途上国の人々の生活は破棄され、施物多様性も破壊されてく。先進国のグリーン化のために、植民地支配による収奪と外部化が、むしろ強化されるのだ。それを避ける唯一の方法が、先進国の脱成長なのである。
というのも、先進国が総エネルギー消費や資源消費量を減らす脱成長の道を選択すれば、現実に達成可能かわからないほどの急激なデカップリングを要請せずに済むからだ。そうすれば、BECCS やメガソーラーに依存しない形での 1.5℃目標の道も開ける。途上国からの資源採掘への依存も緩和可能になる。そうすることで、グローバルサウスは資源や土地に対する主権を取り戻し、グローバルノースの経済成長に奉仕させられることをやめることができる。唯一これが、気候正義の名前に相応しい選択肢ではないか。
資本主義はこれまで、レイシズムを用いて、植民地という周辺から富の収奪を繰り返してきた。それが今日の環境危機にも繋がっている。だから、気候危機を前にした脱成長は生態学的な観点からだけでなく、反植民地主義という観点からも要請されるのである。
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