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2021年12月31日 (金)

人間と科学 第330回 医療統計学リテラシー(2) ③ オッズ比とリスク比

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 なぜこんなに面倒なオッズ比が、臨床研究で多用されるのだろう。オッズ比は、ケースコントロール研究において、初めて臨床研究で使われるようになった。ケースコントロール研究では、ケース(肺がんなどアウトカムの起こった集団)に対して、アウトカムの起こっていない同数(同数でない場合もある)のコントロールからデータを集めてきて、暴露(喫煙など)があったかどうかを調べる研究だ。

 ケースコントロール研究では、アウトカムの起こった人のデータを優先的に集めるため、そもそもリスク比が計算できない。ケースコントロール研究ではリスク比ではなくオッズ比を用いると、母集団のリスク比がうまく近似できるとして、多用されるようになった。

 オッズ比はケースコントロール研究以外でも多用される。それは、リスク比という指標が数学的に厄介だから。リスク比にはシーリングが起こる。例えば、非喫煙者の肺がんリスクがすでに 90 %を超えるような場合、喫煙者の肺がん発症率がいくら 100%であっても、リスク比は最大で 1.1にしかならない。比較群のリスクによってリスク比はそれ以上大きくならない値(シーリング)が起こってしまう。

 シーリングによって、コンピュータによる計算がうまくいかず、昔の非力なコンピュータでは、特に多変量解析のような量の多い計算を行う場合、結果が出ないことが多かった。それに比べ、オッズ比を計算するロジスティック解析の計算は、安定して答えが導き出せたのである。

 こうして、オッズ比はリスク比に替わる指標として臨床研究で広く用いられるようになった。

 

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