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2021年12月 7日 (火)

Clinical 歯周病と関連する疾患 ~関節リウマチと EBV 陽性粘膜皮膚潰瘍~ ②

続き:

1. 歯周病と関節リウマチとの関連

1)関節リウマチについて

 関節リウマチ(RA)は慢性的な関節炎を主とする自己免疫疾患である。主病変は関節滑膜に生ずるが、進行すると軟骨や骨の破壊が起こり、関節の破壊・変形を来すようになる。はじめは手指や足のゆび(つま先)などの小関節の腫脹・疼痛や朝のこわばりを自覚することが多く、進行すると大関節炎の炎症や関節外および全身の症状(貧血、倦怠感、微熱)が生じてくる。本邦では30~50歳代の女性に多く、患者数は全国で70~80万人と推定されている。

 発症の機序としては HLA-DR(特にDR4) の遺伝的因子と、喫煙、細菌、ウィルスなどの環境因子の両者が関与し、自己免疫反応が誘発されることがいわれている、近年、環境要因の一つとして歯周病との関連が示唆されいる。

 血液検査所見として、リウマトイド因子(RF) および抗 CCP 抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体:anti-cyclic citrullinated peptide antibody) の両自己抗体陽性が RA 診断にとって重要である。ことにシトルリン化蛋白質に対する自己抗体である抗 CCP 抗体は、RA に特異度が高い。また、診断や疾患活動性の指標として CRP (C反応性蛋白:C-reactive protein) と赤血球沈降速度(赤沈)の上昇が挙げられる。確定診断は血液検査所見だけでなく、身体所見、画像所見などを組み合わせて総合的に行われる。

2) シトルリン化蛋白質とは

 シトルリン化蛋白質とは、翻訳後の蛋白質の一部のアルギニンがシトルリンというアミノ酸に修飾された蛋白質の総称である。この修飾を触媒するカルシウムイオン依存性酵素が PAD (peptidyl arginine deiminase) である。アルギニンは塩基性アミノ酸であり、中性アミノ酸であるシトルリンに修飾された蛋白質は、陽電荷が減少して高次構造に変化がもたらされる。

 シトルリンは生体内では尿素回路において生成されるが、蛋白合成経路で翻訳に用いられることはなく、シトルリン化蛋白質は PAD による修飾でのみ生ずる。シトルリン化蛋白質の生理的作用としては、正常な表皮の角化、ミエリン鞘の形成などが挙げられている。

 病的にはアルツハイマー病、プリオン病、パーキンソン病、多発性硬化症、尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎、そして RA に関連することが報告されている。

3) RA におけるシトルリン化蛋白質に対する自己抗体

 遺伝子解析により関節リウマチの原因遺伝子の一つに PAD4 (PADのアイソザイムのひとつ)が挙げられている。PAD によって生体内に生じたシトルリン化蛋白質が異物として認識されると、それに対する自己抗体が産生されると想定され、合成ペプチドを用いた関節リウマチ患者血清の検索から特異性が高いことが示された。

 現在は、抗原として直鎖状より環状のものが感度が高いことから、環状合成シトルリン化ペプチド (CCP) を抗原として関節リウマチの血清診断法が臨床応用されている。これが前述の自己抗体としての抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗 CCP 抗体)検査による RA 診断である。因みに、関節リウマチの病変部におけるシトルリン化はフィブリンに生ずるとされており、次に述べる歯周病においても共通する可能性が考えられる。

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