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2022年1月 6日 (木)

Clinical 抗血栓薬を内服している患者の抜歯 ②

続き:

1. 血栓症、塞栓症

 血管内で流動性を保つ血液が、血管内で異常に固まり血栓を形成する病態には、Virchow の 3 徴候として知られる「血管壁の異常」、「血液性状の異常」、および「血液の鬱滞」が関与しており、血小板と凝固因子が重要な役割を担っている。血流の流れが速い動脈にできる動脈血栓は主に血小板が作用し、血栓の色が白色を呈することから「白色血栓」と呼ぶ。一方、血液の流れが遅い静脈内で起こる静脈血栓は赤血球とフィブリンからなり、赤く見えるので「赤色血栓」と呼ぶ。

 動脈にできる血栓と静脈にできる血栓がある。動脈血栓はアテローム血栓であり血小板に富んでいる。 血小板血栓:コラーゲンおトロンビン

 一方、静脈血栓はフィブリンに富む血栓である。フィブリン塊:組織因子 (TF:組織因子、VWF: フォンビルブランド因子、NETs . neutrophil extracellular traps)。

 動脈硬化が進展しプラークや狭窄病変が生じ、それが自壊すると、血管内皮の抗血栓性が消失するとともに、血小板機能が活性化され血小板主体の白色血栓が形成。高度狭窄窯変の末梢では血流が鬱滞し、、凝固系の関わりの強い赤色血栓も形成されることもある(アテローム血栓)。

 長期の安静などにより血液が鬱滞すると、静脈内に赤血球とフィブリンからなる血栓が形成される(静脈血栓)。このように、血管内局所で形成された血栓により血流が障害されて虚血症状を呈する病態を「血栓症」と呼び、血管で形成された血栓が局所から剝がれ、血流に乗ってその末梢で閉塞し、虚血症状を呈する病態を「塞栓症」と呼ぶ。心房細動では心房頻拍の影響により血液が左心房内で鬱滞し血栓が形成される。その血栓が脳に流れて塞栓症を引き起こす(心房細動に伴う心原性脳塞栓症)。両者が混在する病態も少なくなく、血栓・塞栓症と呼ぶこともある。

 超高齢社会や生活習慣病の増加により、アテローム血栓症や心房細動に伴う脳塞栓症、さらには静脈血栓塞栓症などの様々な血栓性疾患が急増している。また、医療の進歩により生体内に各種デバイス(人工弁、ステント、人工血管、ペースメーカーなど)を装着した患者も増加しており、血栓症発症のリスクが高くなっている。これらの患者では血栓症の予防のために抗血栓療法が行われている。

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