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2022年1月10日 (月)

Clinical 抗血栓薬を内服している患者の抜歯 ⑥

続き:

3) ガイドライン(ガイドライン統括委員会の見解)

(1) 血小板療法患者への対応

①従来の抗血小板薬(アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、シロスタゾールなど)単剤を服用している患者

 従来の抗血小板薬(アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、シロスタゾールなど)単剤を服用している患者に対して普通抜歯を行う際に、薬剤継続下で抜歯を行うことが提案されている。その際には、適切な局所止血処置を行うことが求められている。

②新しい抗血小板薬(プラスグレル、チカグレロル)単剤を服用している患者

 プラスグレル、チカグレロル単剤投与患者に対して普通抜歯を行う際に、薬剤継続下で抜歯を行うことが提案されている。その際には、適切な局所止血処置を行うことが求められている。

③複数の抗血小板薬を服用している患者

 抗血小板薬 2剤を併用している患者で普通抜歯を行う際に、薬剤継続下で抜歯を行うことが提案されている。ただし、併用患者では単剤投与患者に比べて全身的な出血性合併症の頻度、および、局所止血可能であるものの抜歯後出血の頻度は増加することから、十分な局所止血処置が必要であり、対応可能な医療機関に相談する等の慎重な対処が求められている。

(2) 抗凝固療法患者への対応

①ワルファリン単剤を服用している患者

 ワルファリン単剤の服用患者において普通抜歯を行う際には、これら薬剤を継続投与下に抜歯することが提案されている。その際には、PT-INR が疾患における至適治療域にコントロールされているか確認するとともに、適切な局所止血処置を行うことが求められている。しかしながら PT-INR が至適治療域内であっても後出血をきたすことがあることを指摘し、PT-INR 値のみで合併症の可能性を判断することに警鐘を鳴らしている。

②直接経口抗凝固薬 (DOAC) 単剤を服用している患者

 DOAC 単剤による抗凝固薬投与患者に対して普通抜歯を行う際には、これら薬剤を継続投与下に抜歯することが提案されている。その際には適切な局所止血処置を行う必要があることとともに、後出血を減らすためには、DOAC 血中濃度の推移を念頭に入れて対処することを求めている。

 なお、以上に記載した見解は、単数歯の普通抜歯に関して検討された結果である。抜歯可能な本数に関して検討した研究はほとんどなくエビデンスの高い結果は導き出せないが、多数歯の抜歯では対応可能な医療機関に相談する等の慎重な対応を求めている。難抜歯に関しては、検討された研究は少なくエビデンスの高い結果は導き出せないとしているが、適切な局所止血処置を行えば重篤な術中、術後の出血をきたすことはなく継続投与下に抜歯を行うことは可能であると記載されている。しかしながら、後出血の可能性は明らかに増加すると考えられることから、対応可能な医療機関に相談する等の慎重な対応を求めている。

(3) 抗血小板薬と抗凝固薬の併用患者への対応

 抗凝固薬と抗血小板薬の併用療法を行っている患者においても、抗凝固薬と抗血栓薬を継続して抜歯を行い、局所止血で対応することが望ましいと考えられるが、両者の併用では後出血が重篤になる可能性があり、その害は血栓・塞栓症のリスクよい大きくなる可能性があること、又、患者間のリスクにばらつきがあることから、対応可能な医療機関に相談する等の慎重な対応が必要であると記載されている。

(4) 抗血小板薬や抗凝固薬に影響を及ぼす薬剤との併用

①抗血小板薬やワルファリンに対する鎮痛剤( NSAIDs,COX-2 阻害薬、アセトアミノフェン)の作用

 抗血小板薬やワルファリン投与中の患者においては、NSAIDs,COX-2 阻害薬、アセトアミノフェンの投与は最低必要量にとどめることが求められている。又、長期および大量に投与する場合には、出血性合併症の発生の可能性が高まる可能性があるので、注意深い対処が求められている。

②抗血小板薬やワルファリンに対する抗菌薬の作用

 抗血小板薬服用患者の抜歯では、抗菌薬を数日投与しても局所の止血処置が適切に行われていれば、抜歯後出血のリスクは低いと述べられている。一方、ワルファリン内服患者では抗菌薬の投与により PT-INR は上昇することから、出血リスクは高まるであろうと推察されている。明確なエビデンスはないものの、感染性心内膜炎予防ガイドラインのような抜歯前1回、および術後 3 日間程度の抗菌剤の投与では、局所の止血処置が適切に行われていれば、抜歯後出血のリスクは低いであろうとされている。

③ DOACに対する薬剤の相互作用

 DOAC投与中の患者では、抜歯後の鎮痛剤(NSAIDs 、アセトアミノフェン)、およびマクロライド系を除く抗菌薬の投与は、重篤な出血性合併症の増加にはつながらないとされている。

(5) 止血方法

 抗血栓薬を継続下に抜歯する場合には局所止血を行うことが推奨されている。どのような局所止血処置を行えば良いかに関するエビデンスはないが、十分な圧迫止血に加えて、縫合やゼラチンスポンジ、酸化セルロースなどの局所止血材の使用は止血効果を高めること、また、止血用シーネ(保護床)の使用が効果的であると記載されている。脆弱な炎症性肉芽組織の存在は、後出血の原因となると考えられることから、十分な抜歯窩の掻把が求められている。

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