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2022年1月 7日 (金)

Clinical 抗血栓薬を内服している患者の抜歯 ③

続き:

2. 抗血栓療法

 抗血栓療法(Antithrombotic therpy)とは、血栓症の発症を予防するための治療のことをいい、抗血小板療法 (Antiplatelet therapy) と抗凝固療法 (Anticoagulant therapy) の 2 つがある。さらに、血栓症の予防ではなく、すでにできてしまった血栓に対する治療法としての血栓溶解法や血栓回収療法がある。

1) 抗血小板薬

 血小板は動脈系の血栓形成に重要な役割を果たしており、抗血小板薬は主として動脈血栓症(脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈血栓症など)の治療や予防に使用される。抗血小板薬は作用機序が異なる数種の製剤が使用されている。シロスタゾール、チカグレロル等を例外として、通常抗血小板薬の効果は不可逆的で血小板に直接作用し、原理的には血小板の寿命(10日)まで作用は続くと考えられており、休薬する場合には 7~10 日間の休薬期間が推奨されている。

 一方、シロスタゾールの作用は濃度に依存し可逆性であり、通常 48 時間以内には体外へ排出される。そのため休薬期間は短くて済む。

2) 抗凝固薬

 抗凝固薬は凝固因子の作用を抑制して効果を発揮するもので、主として静脈血栓症(深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症など)の治療や予防、あるいは心房細動からの脳梗塞症の予防に用いられる。抗凝固薬には、経口の薬剤としてビタミン K 拮抗薬(ワルファリン)と、 DOAC (direct oral anticoagulant : ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)があり、注射用薬剤としてヘパリン類や抗トロンビン製剤などがある。

 ワルファリンはビタミン K と拮抗することにより、ビタミン K が必要な凝固因子である第Ⅱ(プロトロンビン)、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子の働きを間接的に阻害することにより抗血栓作用示す。

 一方 DOAC は、第Ⅹa 因子またはトロンビンを直接阻害することにより抗血栓作用を示す。長年ワルファリンのみが使用されてきたが、近年 DOAC が導入され、多く使用されるようにきている。

 ワルファリンはビタミン K を多く含む食材の摂取により、効果が減弱することなどからコントロールが難しいといった欠点があったが、DOAC では食事による影響はほとんどない。また、ワルファリンは効果に個人差が大きく、効果のモニタリング、定期的にプロトロンビン時間国際標準比 (PT-INR) を測定し、疾患毎に定められた治療域内で PT-INR を維持するように用量調節が行われている。一方、抗血小板薬や DOAC では内服用量から抗血栓作用が推定され、安全域も広く、基本的にモニタリングは不要とされている。

3) 抗血栓薬の併用

 病態の重症度に応じて抗血小板薬が 2 剤投与されたり (DAPT : dual antiplatelet therapy)、抗凝固薬に加えて抗血小板薬が投与( 2 剤・3 剤併用)されたりすることがある。DAPT は、経皮的冠動脈形成術 (PCI) の術後にステント血栓症のリスクを低減させる目的で行われていることが多い。

 抗血栓薬を併用している患者では、抗凝固と抗血栓効果は高まるものの、出血性合併症の頻度が高くなるので注意が必要です。

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