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2022年2月 8日 (火)

人間と科学 第331回 医療統計学リテラシー(3) ③

続き:

PCR検査で陽性だった場合、実際に新型コロナに感染している確率は?

 ~感度と陽性的中率~

 検査で陽性が出た人が「本当に感染している確率」を調べてみよう。

 新型コロナのPCR検査の感度は70%程度、特異度は99%以上程であるといわれている。では、検査で陽性が出た人が実際に感染している確率は、感度で表される70%なのだろうか?それは大きな間違いである。

 感度とは、実際に感染している人がPCR検査を受けた場合に陽性が出る確率、特異度は、実際に感染していない人が検査を受けると陰性になる確率を示している。感度や特異度は、検査で陽性や陰性が出た人が実際に感染している(していない)確率ではない。検査で陽性が出た人が「本当に感染している確率」は、陽性的中度で表される。

 陽性的中率の計算には感度の他に、コロナの有病率が必要である。新規感染者が最も多かった時期の有病率は、1日の発症者数が2万5千人程度だったこと、感染期間を約2週間とすると、約0.3%程度と見積もられる。これから陽性的中率を計算すると、7.4%となる。逆に、検査で出た場合に、実際に感染していない陰性的中率は99.9%となる。

 この計算で用いられた有病率は日本全体の人口における感染者の割合で計算した。これは症状のありなしにかかわらず検査をした場合、陽性が出たとしても、実際に感染してのはそのうちたった17.4%、擬陽性の可能性がかなり高いと解釈できる。

 今度は発熱等の症状が出ている人や、濃厚接触者が検査を受けて陽性が出た場合はどうなるか計算してみよう。コロナの蔓延がひどかった時期の検査陽性率20%を用いると、陽性的中率は94.6%、陰性的中率は93%となる。

 我が国では新型コロナのPCR検査をもっと増やすべきとの議論が広くなされているが、今回の計算結果を踏まえると、皆さんはどう思われるだろうか?

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