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2022年3月20日 (日)

スマホ位置情報の「一網打尽」捜査―――「ジオフェンス令状」の正体 ②

続き:

1 相次ぐ誤認逮捕

 モリーナ氏のケースに続いて、全米各地でジオ令状の公使によって発生した誤認逮捕の被害が次々と明るみに出るようになる。

 2019年3月、フロリダ州在住で当時30歳だったザッカリー・マッコイ氏はグーグル社から一通の警告状を受け取った。それはゲインズビル警察が同社に対して強盗容疑の犯罪現場にいたことが明らかにできると考えたのである。確かに彼は事件のあった日に 1時間に三度、自転車で被害者の家の前を通っていた。マッコイ氏は自転車の走行を記録するアプリを自身のスマホで利用していた。このアプリがグーグル社に彼の位置情報を送っていたのだ。同氏から相談を受けた弁護士は、警察が犯行現場近くに所在した位置情報リストを同社から受け取っていたことを突き止めた。マッコイ氏は自身が犯罪と無関係で、警察によってジョージ・フロイド氏が殺害された後、同市で激しい抗議運動が起こった。多くは平和的なデモ行進であったが、店舗などの破壊行為も発生した。同市警察は、同月27日に起きた店舗破壊行為の犯人を突き止めるため、ジオ令状を用いて、グーグル社に対して同日午後5時20分から40分までの間に被害店舗付近近くにいた可能性のある人物の位置情報が確認できるアカウントリストを開示するよう要求した。ザイード・アブダリ氏は、同社からメールで自身のアカウント情報を警察が開示要求していることを知った。同氏は、確かにその時刻に現場にいたものの、破壊行為には加わらずビデオで撮影していただけだと主張した。

 いま米国では、犯人不明のケースで警察が頼りにするのはDNAや指紋情報、防犯カメラ映像だけではない。位置情報の逆探知という方法だ。多くの人がスマホを利用し、自身の位置情報を使ったサービスを受けているため、ジオ令状を使って誰が現場近くにいたかを割り出して、その上で犯人を絞り込もうとする。最近では、2021/01/06、ワシントンDCで連邦議会議事堂が襲われた事件に関して、FBIがジオ令状を用いて事件発生時刻に現場にいた 100 人以上暴徒を特定し、少なくとも 45人の起訴に繋げたとWIRED誌が報じている。

 けれども、ジオ令状は被疑者が特定されていない段階で大規模な情報収集を行ないそこから被疑者の特定を目指すため、被疑者個人の情報だけが取得されるのではない。特定地域に位置情報利用者が大量に所在してサービスを受けている場合も考えられる。前述のように、対象となった地域にいただけで無関係の人物が被疑者に誤認されるケースも報告されてきた。また、ウイスコンシン州ミルウォーキーでは放火事件捜査のため、2万8000㎡に及ぶエリアで 9時間にわたって位置したアカウントの要求がり、1500人分もの情報が捜査機関に提出されその範囲や時間の広範さが問題になっている。

 

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