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2022年3月24日 (木)

スマホ位置情報の「一網打尽」捜査―――「ジオフェンス令状」の正体 ⑤

続き:

4 ジオフェンス令状の問題点

 合衆国憲法修正四条は「不合理な捜査及び逮捕押収に対し、身体、住居、書類及び所有物の安全を保障される人民の権利は、これを侵害してはならない。令状はすべて、宣誓又は確約によって支持される相当の理由に基づいていない限り、また捜査する場所及び逮捕押収する人又は物が明示されていない限り、これを八知ってはならない」と定める。日本国憲法 35 条のルーツだ。令状発付にあたって裁判官は同条後段にある「相当な理由(probable cause)」と、捜査される場所や逮捕押収の対象となる人や物の「特定性(particularity)」が満たされているかどうかを確認しなければならない。

 同条は、かって植民地時代に法執行機関が押収すべき場所や物を特定しない「一般令状」が用いられたことへの反省から生まれたものだ。こうした一般令状を禁じるため、裁判官にゲートキーパーを期待して令状発付に際して二つの要件――相当の理由と特定性――を設けたと解されている。

 そうした経緯から、ジオ令状は「一般令状」のようn捜査機関が不特定情報をただ探索しているだけではにかと疑問視されている。即ち、一定時刻の特定エリアで位置情報サービスを受けたアカウントをリスト化するよう命じることは、先に説明した位置履歴のオプトイン方式を前提にした場合には必ず犯人がそのリストの中に含まれるという「相当の理由」を説明できない。また、特定の被疑者の情報を開示させるのではなく犯人の可能性のあるアカウントを提示させているのは、捜査押収にあたって対象の「特定性」を欠いていると批判される。

 さらに、多数のジオ令状が裁判所から交付されている一方で、逮捕に結びつく割合があまりに低く、前述した一般令状的な使用方法が常態化している状況に懸念も強い。

 これまで合衆国最高裁は、共産党員の私宅から書籍やパンフレット類を捜索押収するためテキサス州で発付された捜索令状について合衆国憲法修正四条が禁じる不合理な捜索差押えであり一般令状にあたると判断したことがある。一方で、ジオ令状の考え方に繋がるような捜索手法も存在した。その一つがエリア捜索令状といわれる令状だ。この令状は、捜索対象物や被処分者を特定することなく、一定の地域や場所の捜索を許容する。明らかに修正四条の要請を満たさないが、行政による規則違反行為の発見を目的とした立入検査などで例外的に許容されてきたものだ。合衆国最高裁は犯罪の証拠の発見を目的としないことを理由に、こうした立入検査のための令状についてプライバシーの侵害が限定的だとして合憲を判断している。

 だが、公衆衛生や公共の安全という行政目的のために実施される立入検査と、犯人特定の可能性があるとして不特定多数の位置情報を収集する行為を同視することができるか疑問がある。

 

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