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2022年3月23日 (水)

スマホ位置情報の「一網打尽」捜査―――「ジオフェンス令状」の正体 ④

続き:

4 ジオフェンス令状をめぐる法的紛争

 2021年8月現在、令状裁判官がジオ令状の発付について意見を公開した例が複数ある。

 まず、2020年7月に連邦イリノイ北部区裁判所の治安判事が、窃盗事件に関連した捜査において異なる地点で、45分間、100m四方の範囲で位置情報が探知可能な端末について捜査機関が情報開示を求めた三通のジオ令状請求について、一通目については大規模な住宅地域であり多数の端末が対象となること、二通目と三通目については医療施設や多層階の建物で多くのユーザーが存在していることを理由に却下した。

 カンザス州の連邦裁判所でも、2021/06/04に放火罪に関連してジオフェンス令状が請求されたが、治安判事によって憲法上疑問が残るとしてこれが却下されている。

 他方、2020年10月、シカゴ地域で発生した10件の自動車放火事件に関して請求された六つのジオ令状請求について、治安判事は当該請求内容が早朝の時間帯の15分から37分間という短時間に限られており地理的範囲についても 1 ブロックほどに範囲が絞られていることを前提として、ジオ令状が犯罪捜査で一般的になっていて、本件請求が合衆国憲法修正四条の令状発付要件を満たしているとして令状を発付した。

 全米で多数のジオ令状が請求されているにもかかわらず、このように法的見解が裁判官から公表されるのは珍しい。理由の一つは、令状請求にあたり法執行機関がグーグル社や裁判所に対して保秘要請を加えていることが挙げられる。今のところ、ジオ令状を規制うる立法は 2020年4月にニューヨーク州議会に出された法案に止まっている。提出議員は、同令状について合衆国憲法修正一条の保障する信教の自由、移動の自由、政治的表現の自由を脅かすものとして反対を表明している。先の BLM 運動の盛り上がりの中でジオ令状が用いられたことに端を発しているといえよう。

 2021年10月末現在、米国の法廷では少なくとも 2件の事件でジオ令状の適法性が争われている。今後、合衆国最高裁までジオ令状の合憲性論争が争われるかどうかは不明だが、以下、そうした事件で交わされている議論を参考にジオ令状をめぐる論点を紹介します。

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