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2022年3月17日 (木)

パンドラ文書を解読する (下) ③

続く:

● 日本政府の要職者二人それぞれの事情

 タックスヘイブンへの秘密ファイルにアクセスできる特権を与えられたほんの数人の日本人の一人として、筆者(奥山)らは、日本の読者に知らせるべき情報を見落とすことのないようにしなければならないとの責任を感じながら、その分析にあたってきた。中でも、日本の公職者と租税回避地とのつながりがもしあるのならば、それについての報道の公益性はとても高い。

 2016年4月に報道を始めた「パナマ文書」には公職者は見当たらなかったが、2017年11月の「パラダイス文書」報道では鳩山由紀夫元首相ら三人の元国会議員の関わりを指摘した。

 今回の「パンドラ文書」については、国会議員は一人も見当たらなかった。が、政府の政策に影響を及ぼすことのできる立場にあった二人の名前を見つけることができた。

 政府の内閣官房で東京五輪・パラリンピック推進本部の事務局長を務めた平田竹男氏はその一人だ。

 パンドラ文書に含まれている関係書類によれば、2004年、平田氏側の依頼でバージン諸島に「チャールズ・インター」という名前の会社が設立されたが、2008年に清算された。平田氏は資源エネルギー庁石油・天然ガス課長を最後に2002年に経産省を退官し、2002年から2006年まで日本サッカー協会の専務理事を務めており、会社を設立したのはその頃のことだ。

 筆者(奥山)は、2021/09/08、平田氏とあった際、これについて説明を求めた。すると、平田氏は「ケイマンとかタックスヘイブンとかそういうところに口座をどうやってつくるのか、どういうプロセスなのかを知りたかった」と答えた。「実際にお金を動かしたことは一回もない」とも強調したのだ。

 平田氏の説明を活字にして要でみると、取って付けたような言い訳だと疑問をもたれる向きもあるかもしれないが、筆者(奥山)の印象では、平田氏の説明は真実であるように思われる。パンドラ文書にある書類を読む限りでは、「チャールズ・インター」という会社の口座でお金が動いた形跡は実際見当たらず、そのほかの説明も文書の内容と符合しており、また何よりも、平田氏の話しぶりに実感がこもっていたからだ。

 平田氏によれば、「石油やサッカーで交渉する相手の海外の人たちはしばしば『ここからこう飛ばして、ここからこう』と資金の動きの話をしており、そういうことが分からないと仲間になれないという。たいてい、そういう交渉の場はリゾート地で設定され、銀行員が同席する。「そういうのが分かるようになる」のが交渉にあたって必要だったという説明は事実なのだろうと筆者は感じる。

 ふつうの日本人がなかなか仲間に入れてもらえない、もう一つの経済圏、ICIJのジェラード・ライル事務局長おいう「パラレル・ユニバース」がこの地球上に存在する。その一端を平田氏の話かrうかがい知ることができるように筆者には思えた。

 パンドラ文書に見いだすことのできたもう一人の公人は、政府税制調査会の特別委員や経済財政諮問会議の専門調査会会長代理、内閣府参与を歴任し、法務省「危機管理会社法制会議」議長の肩書を持つ投資会社経営の原丈人氏。岸田文雄首相が「新しい資本主義」の知恵袋として頼る人物である。

 「パンドラ文書」にある書類によれば、原氏は、バージン諸島の「テクノロジー・アドバイザリー・グウープ」という名前の会社で2000年から役員を務めた。同社の所有者は、名義上は別のケイマン諸島の会社だが、実質的な受益者は原氏らとされている。

 取材に対し、原氏は「新事業の設立にあたっては、関係国の制度諸条件を満たすために、顧問弁護士や、四大監査法人のコンプライアンス要求を踏まえて、ケイマン他必要に応じて、会社を創る必要があります。この会社は英国でのブンチャーキャピタル経営にあたって、当時の顧問会計士によって、この一環で作られた会社だとおもいます」とコメント、納税については「監査法人などの指導に基づき、適時・適切に必要な課税地にのうぜいしています」と説明している。

 原氏によれば、「米国政府の金融規制を避けるために、日本を含む世界中の数多くの金融機関やベンチャーキャピタル、プライベートエクイティがケイマン他に会社をつくるのは常識」となっているという。しかし、筆者(奥山)の考えでは、こうした金融規制は、金融システムを担う銀行など金融機関の公的な役割に配慮し、破綻すれば公的資金が使われることもある金融機関の資産の健全性を保つ目的など正当な政策目的があって法律で定められたものであり、それを「回避」するのは、たとえ適法であっても、社会の期待・要請に反する行為であるように見える。その点、どのように考えるのかを原氏に問うたが、無返答だった。   これは如何か。

 

 

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