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2022年3月30日 (水)

人間と科学 第333回 医療統計学リテラシー (5)―①

新谷 歩(大阪市立大学大学院医学研究科医療管理医学講座医療統計学教授)さんの小論文を載せる コピーペー:

   正しい比較とは? ~リンゴとミカンを比べていないだろうか?~

 新型コロナウイルス感染症の治療薬など、新たに開発された治療薬の効果を調べるには、研究に参加した被験者を、投薬群とプラセボ群などの非投薬群にランダムに割り付ける無作為化比較試験が必要である。コインを投げて表が出たら投薬群、裏が出たらプラセボ群というようにランダムに割り付けることで、比較群間の被験者の年齢や性別などといった背景を揃えることができる。背景が揃うと、比較群間のデータを直接比較することが可能になる。

 しかしこの無作為化試験のような実験的な研究を行うには、被験者が組み入れにくい、費用がかかるなど施行に際してハードルが高く、多くの臨床研究は無作為化比較試験でなく、実臨床の患者データを直接用いることが多い。実臨床では、治療された群はより重篤な人が多く入っているなど、比較群間の背景が揃わないことが多い。

 例えば新型コロナの治療薬を飲んだ群と飲まなかった群を比べる場合、基礎疾患を持った高齢者のほうがより薬を飲んでおり、同時に重症化率も高い場合、治療した群のほうがしない群に比べ、重症化が高くなり、薬がまるで効かなかったかのとうなおかしな結果になる。

 薬が効かなかったのではなく、元来、重症化しやすい人たちに投薬されていただけのことであるが、このような背景のズレを考えに入れず比較してしまうと薬の効果を間違って評価してしまう。このような比較群間の特性のズレを無視し、間違った結果を出してしまうことを、英語では「 Comparing apples to oranges(リンゴとミカンを比べる)と呼び、専門用語では「Confounding(交絡)」と言う。

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