« スマホ位置情報の「一網打尽」捜査―――「ジオフェンス令状」の正体 ⑥ | トップページ | 人間と科学 第333回 医療統計学リテラシー (5)―① »

2022年3月28日 (月)

スマホ位置情報の「一網打尽」捜査―――「ジオフェンス令状」の正体 ⑦

続き:

6 プラットフォーマー規制の課題

 これまでグーグル社はジオ令状に応じた件数を公表していなかったが、2021年8月、ジオ令状に対する批判が高まる中、回答状況を公表、2020年に 1万件以上発付されたことを明らかにした。だが、この令状を使って捜査機関がどれくらい犯人に辿り着くことができたかは不明。又、同社はジオ令状での検索1回あたり 245ドルを請求している。従って、2020年だけで 2億 5000万ドル以上の収入を法執行機関から得たのである。だが、その提供された位置情報は、同社のサービスを利用するユーザーの個人情報の一部で有るはずだ。日本円で年間 250億円以上を位置情報検索によって稼ぎ出すグーグル社の”令状ビジネス”は果たして正当化可能だろうか。

 たしかに同社は要求される位置情報の範囲に制限を掛けるよう法執行機関と交渉するというので、そのコストかもしれない。しかしながら、公になっている事例以外でそうした制限がどれくらい果たされているかは明白でない。取集範囲の設定が捜査機関の裁量に委ねられているとも批判されており、ジオ令状に対するグーグル社の事前規制は疑問視されている。

 さらに、ジオ令状によって法執行機関が大量の無関係な人物の情報を収集しているにもかかわらず、集められたデータの保管・廃棄などの管理実態も不明である。米国では、いかなる公的機関もジオ令状によって収集された位置情報データに対する監督を行っていない。グーグル社は国家機関のエージェントとしてデータ取集をしていると言えないだろうか。

 このジオ令状以外にも、グーグル社に対しては法執行機関が「キーワード令状」と呼ばれるデータ提出命令を行っていることも伝えられている。これは、ジオ令状と同様被疑者不詳で発付されるもので、特定のキーワードを検索エンジンに入力したアカウント情報を求める強制処分だ。同社はまだこのキーワード令状の要請状況について「透明性レポート」でも説明したことがなく、件数や実態は不明だ。しかし、キーワード令状もジオ令状と同様に合衆国憲法修正四条の要請である相当の理由と特定性の要請が満たされていないと批判されている。

 他のプラットフォーマーについても問題がある。例えば、2021年8月にアップル社は米国内の iPhone ユーザーの保存する写真データに自動性的虐待映像があるかどうか検知すう計画を公表した。プログラムに反応した場合でも人の目で確認して当局に通報する仕組みだという。この検知プログラムは、検知対象が間違いなく私的領域である点でプライバシー侵害を伴っているため議論を呼んでいる。アップル社がこのような検知行為ができるなら、クラウドサービスを行っているその他のストレージサービス企業も可能か。そして、児童性的虐待画像で許されるのであれば、著作権違反動画や政治的メッセージ性のある映像を検知することも許されるだろうか。

 日本でも最近、プラットフォーマーに対する規制の必要性が、マーケットの公平性や個人情報の収集などの観点からようやく議論されるようになってきた。だが、問題は経済市場や個人情報の枠にとどまらない。様々な種類の、多様なビッグデータを抱えるプラットフォーマーが、すでに政府や捜査機関のエージェントとして機能する時代を迎えている。そして、我々は、どうやらそうした機能を制御したり、透明性を確保したりする仕組みを持ち合わせていないことが明らかになっているといえそうだ。

« スマホ位置情報の「一網打尽」捜査―――「ジオフェンス令状」の正体 ⑥ | トップページ | 人間と科学 第333回 医療統計学リテラシー (5)―① »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事