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2022年4月15日 (金)

Topics NDB の活用でさらに明らかとなった口腔健康管理の重要性 ③

続き:

2. 歯数とアルツハイマー型認知症との関連

 認知症とは、「正常に達した知的機能が後天的な器質性障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態で、それが意識障害の無い時に見られる」と定義する。人口の高齢化とともに有病者が増加している認知症への対策は、日本のみならず世界における課題となっている。日本では2010年時点で、認知症高齢者は約280万人(65歳以上の人口の9.5%)であり、2025年には470万人(65歳以上人口の12.8%)になると推測される。また、2040年には世界の約8100万人が認知症に罹患すると推計されている。しかし、認知症治療の専門医不足などから適切な医療の提供が行なわれておらず、認知症の予防や早期発見が重要な課題となっている。第78回介護保険部会における認知症の種類を示すことができる。中でも、最多は、アルツハイマー認知症であり約7割を占めている。

■アルツハイマー型(67.6%)

 脳内にたまった異常なたんぱく質により神経細胞が破壊され、脳に萎縮が起こります。

【症状】昔のことはよく覚えているが、最近のことは忘れてしまいます。軽度の物忘れから徐々に進行し、やがて時間や場所の感覚がなくなっていく。

■脳血管性認知症(19.5%)

 脳梗塞や脳出血によって脳細胞に十分な血液が送られずに、脳細胞が死んでしまう病気です。高血圧や糖尿病などの生活習慣が主な原因。

【症状】脳血管障害が起こるたびに段階的に進行します。また障害を受けた部位によって症状が異なります。

■レビー小体型認知症(4.3%)

 脳内にたまったレビー小体という特殊なタンパク質により脳の神経細胞が破壊されて起こる病気。

【症状】現実的にはないものが見える幻視や、手足が震えたり筋肉が固くなるといった症状が出る。歩幅が小刻みになり、転び易くなります。

■前頭側頭型認知症(1.0%)

 脳の前頭葉や側頭葉で、神経細胞が減少し、脳が萎縮する病気。

【症状】感情の抑制がきかなくなったり、社会のルールを守れなくなるといったことが起こる病気。

 これまでの研究で認知症と現在歯数や歯周病との関連が多く報告されている。特に、現在歯数との関連は、多くの疫学研究から明らかである。関連の方向性として、認知症になると口腔衛生状態が悪化して歯の喪失につながることは明らかであるが、その逆の方向性も次第に明白になってきた。近年、出されたシステマティックレビューでは、19 歯以下の者は 20歯以上の者に比較して、認知機能低下と認知症発症のリスクが、いずれも約2割高くなることが示されている。

 歯の喪失から認知症発症へ至る機序はいくつか考えられる。まず、歯を失うと、咀嚼回数が減ることが予想される。咀嚼回数が減ると、大脳の海馬や扁桃体といった認知機能に関わる領域への刺激が少なくなる。結果、認知機能低下が起こり、認知症になり易くなる可能性がある。次に考えられるのは、歯を失うと咀嚼能力が低下、食べられる食品が限定されてくる。特に、歯が、少ないと柔らかい菓子パンや麵類のようなものを好んで食べて、生野菜などのビタミン類の栄養素の摂取不足が起こることが指摘されている。ビタミン類の摂取不足は認知症のリスクを高めることが明らかになっている。すなわち、歯の喪失から栄養状態の変化を経由して認知症発症に至る経路が考えられる。

 その他、歯を失う主な原因である歯周病によって、長い間、歯周組織の炎症で産生されたサイトカインや活性酸素種などが、血液を介して脳に影響を及ぼす経路も考えられる。歯周炎によって、全身の血液に炎症性サイトカインや活性酸素種の濃度が高まること、また炎症性サイトカインや活性酸素種よって認知症の発症リスクが高まることも明らかにされてきており、歯周病から認知症発症に至る経路の存在も想定される。

 これまでの報告は、多くとも数千名規模の研究対象者から得られた結果で、実際に認知症患者がどのくらい歯科医療機関を受診しているか、あるいは現実社会での歯数と認知症との関連はほとんど示されていなかった。そこで、NDB を活用して、アルツハイマー型認知症病名と歯周炎病名から推測される歯数の調査を行った。

 

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