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2022年4月 2日 (土)

パンドラ文書を解読する (下) ④

奥山俊宏(朝日新聞編集委員)さんと畑 宗太郎(朝日新聞記者)さんの「世界 1」よりの続き:コピーペー:

続き―――――――――である。

   カザフのウラン権益

 日本の原子関連企業 6社が、世界最大のウラン産出国であるカザフスタンでウラン取引の権益を確保するため、バージン諸島の持ち株会社を取得し、その後、訴訟に巻き込まれた。そんな経緯を示す書類も「パンドラ文書」には含まれていた。

 エナジー・アジア・ホールディングス()。Energy Asia Holdings Limited' EAH社)。カザフ南部のウラン鉱山「ハラサン鉱山」の開発を行う。国営原子力会社「カザトムプロム社n関連 2社への投資を目的とするバージン諸島の持ち株会社だ。2007年に丸紅が買収した。

 「パンドラ文書」に含まれる書類によると、買収額― 5億4000万ドル(当時のレートで約 640億円)。その後相次いで、東京電力(出資比率 30%)、中部電力(10%)、東北電力(5%)、東芝(22.5%)、九州電力(2.5%)が出資者に加わった。

 2007年といえば、東日本大震災が発生し、東京電力の福島第一原発で大規模な炉心溶融事故が起きる 4年前だ。世界は「原子力ルネサンス」に沸き、ウラン需要の高まりによってウラン価格はピークを迎えていた。ウラン権益の確保で出遅れた日本は、前年夏に当時の小泉純一郎首相が、その年の4月には甘利明経済産業相(当時)がカザフ訪問し、原子力分野での協力促進やウラン鉱山お共同開発について合意をとりつけた。

 丸紅は、カザフのウラン鉱山開発への参画について筆者(畑)の取材に次のように回答した。「原子燃料サイクルのバリュー・チェーンの拡充ならびに日本のエネルギーセキュリティーへの貢献という観点から本件に参画しました。日本側株式全体で、年最大 2000トンのウラン取引権を有する規模です」

 当時、日本側関係者の間では、前年に東芝が買収した米国の原子炉メーカー、ウェスティングハウス社株の一部獲得にカザフ側が関心を示したことで権益確保が可能になった、との見方が有力で、今回判明したカザフ側の文書にも、「「(両者の)接近の背景には、カザトムプロム社がウェディングハウス株 10%を取得したいという願望があった」と記録されていた。ある関係者は「「カザフロシア依存から抜け出すことももくろんだようだ」と分析する。同社は 2007年、日本側の出資額と同じ 5億4000万ドルでウェスティングハウス社株 10%2を取得した。

 なぜ、タックスヘイブンへの会社を通じた出資という形がとられたのか。

 今回判明した文書により、EAH社は、同じバージン諸島のエナジー・アジア(Energy Asia (BVI ) Limited'  EA 社)という別の会社を介して、カザフの2 社を間接支配していたことが分かった。

 当時を知る日本側の関係者は「カザフはウラン権益の関連会社の多くをバージン諸島に置いていた。権益を取るには、その株を買いに行くしかなかった」と解説し、あらかじめ準備された構造だったと述べた。カザフ側がバージン諸島に会社を置いている目的については「私たちには知りようもない」という。

 2009年の「変」に関連するとみられる訴訟の資料も「パンドラ文書」に含まれていた。当時の報道によれば、日本側との交渉を担ったカザトムプロム会社のムフタール・ジャキシェフ社長が、2009 年に国有資産横領の疑いでカザフお治安当局に逮捕された。資料によれば、これにからみ、同社が2014年にジャキシェフ氏の背任行為あった」と主張。併合で審理された関連訴訟では、EA社が被告とされ、丸紅が被告側で補助参加していたという。

 丸紅は取材に「係争に関わることであり、回答を差し控える」とコメントし、「パンドラ文書」に訴訟帰趨に関する資料は見当たらなかった。EA 社の取締役に名を連ねた日本側関係者の一人は筆者(畑)の取材に「途上国のエネルギーには政治的な話が必ずついて回る。我々も巻き込まれ、非常に弱ったところはあった」と振り返った。事業への影響は出なかったというが、日本の原発の多くが福島事故のあおりで停止。別の関係者によると、その後、ウランは順調に産出されているが、日本側の権益分は日本にはほとんど輸入されず、需要のある外国市場向けに売られているという。

 タックスヘイブンへの利用に関して、丸紅は一般論として「会社設立や登記の手続きが簡易で、その設立および登記手続きに要するコストも比較的安く、また金融面も充実している点などを理由として会社を設立することがあります」と取材に回答した。

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