T0pics NDB の活用でさらに明らかとなった口腔健康管理の重要性 ④
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2017年4月診療分のNDB のうち、60歳以上の歯周炎病名(コード:5234009)および欠損歯病名(コード:5250001)を持つそれぞれ4,009,345名、662,182名を対象とした。これらの歯周炎と欠損歯病名を保有者の2017年の人口に占める割合を示すと、
2017年時点の人口に占める年齢階級別 対象者割合(歯周炎病名と欠損歯病名)
60~64歳 8.3 % |
65~69歳 10.2% |
70~74歳 12.3% |
75~70歳 13.9% |
80~84歳 12.4% |
85歳以上 8.4% |
これを見ると60歳以上の2017年人口に占める割合は10.9%であり、75~79歳は13.9%だ。この研究で用いた1ヵ月間のデータは、60歳以上において人口の約10%を占めて、この年代の歯科医療機関への受診率が高いことがうかがえる。これらの対象者の内、同月にアルツハイマー型認知症病名(コード:8842548,8842549,8842550,8842551)を保有するレセプトを結合し分析を行った。なお、同一患者の重複受診も確認、削除した。
歯周炎病名では、現在歯数を1~9歯、10~19歯、20~32歯の3群とし、欠損歯病名では、1~14歯、15~27歯、28~32歯との3群として比較した。内容として、●歯周炎病名を対象とした場合の各年齢群の対象者数とアルツハイマー型認知症有病率の関係。男性では2.1%女性では3.7%の者がアルツハイマー型認知症の診断を受けていた。男性より女性で、年齢が高くなるほど、歯数が少ないほどアルツハイマー型認知症の有病率が高いことが分かる。欠損歯病名における結果として、男性は2.7%、女性では4.5%の者がアルツハイマー型認知症の診断を受けていた。そしてアルツハイマー型認知症病名の有無を目的変数とし、性別と年齢を調整(統計学的に影響を除外すること)したロジスティック回帰分析をした結果が、関連図にある。―――これには、年齢を調整して、オッズ比で表現している。
20~28歯の現在歯数を保有する者を基準とした場合、調整オッズ比(アルツハイマー型認知症の保有するリスク)が10~19歯では1.11(オッズ比の95%信頼区間:1.10~1.13)、1~9歯では 1.34≪1.32~1.37)と有意に高かった。
また欠損歯病名による結果においても、喪失歯数 1~13歯を基準とした場合、14~27歯で1.40(1.36~1.44)、28歯喪失の場合は 1.81(1.74~1.89)という結果であった。
これらの結果をまとめると60歳以上の歯科および医科の医療機関を受診した約 467 万名を対象として、アルツハイマー型認知症のリスクが高いことが明らかになった。また、日本において60歳以上では人口の 8~14%が歯科医療機関を受診しており、歯科医療機関の受診者のうち 80歳以上になると 6~16%がアルツハイマー型認知症と診断されていた。アルツハイマー型認知症の診断を受けた患者も相当な割合で歯科医療機関を受診していることが明らかとなり、アルツハイマー型認知症の知識はすべての歯科医療従事者に求められることも示唆された。
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