デジタル・デモクラシー ②
続き:
監視国家化してきた米国
米国で成体認証技術が急速に拡大する契機は、2001/09/11、だった。当時のブッシュ政権は、米国にとって「危険」とされるあらゆる人物をスクリーニングし、逮捕・排除する方針をとり、そのための技術開発に巨額を投じた。創業まもないGoogle や Facebook は、この政策に沿った形で資金を得ながら、後に監視技術の重要部分を担う数々のアプリやAIのアルゴリズムを開発し、現在の圧倒的優位な地位を得た。顔認識ソフトウェアを開発するクリアビューAI社ヤ、ビッグデータ分析を強みとするパランティア社など生体認証技術に特化した企業も急成長した。Amazon も2016年に独自の顔認識ソフト「Rekognition」を開発し、警察をはじめ政府・自治体へ販売を拡大してきた。
これらの監視産業の台頭は、警察や法執行機関の捜査方法を変化させると同時に、米国社会に大きな影を落としていく。顔認識、ドローン、ナンバープレート・リーダーなどを通じて大量のデータが収集される中で、警察当局による市民活動家の監視や運動への弾圧、移民への過剰な拘束・管理が顕著になってきたのだ。
筆者(内田)は米国の活動家の友人から次のような話を聞いたことがある。2011年、「ウォ―ル街を占拠せよ」運動が起こった際、彼はミズーリ州セントルイスでデモに参加した。仲間から「警察に写真を撮られないよう、顔をバンダナで隠せ」と言われたが、そのようにはしなかった。警察は参加者を撮影していたが特に気にしていなかった。
だが、sれから3年後の2014年8 月、セントルイスの隣町ファーガソンで、警察による黒人射殺事件が起こると、各地で抗議行動が展開。いわゆるファーガソン暴動である。彼はここでもデモに参加したが、何度も警察から呼び止められ、あれこれ質問された。
「警察は自分を特定して調べているようだった。自分の顔、そしてすべてが盗まれ、勝手に取り扱われているような……監視技術のせいではないかと思った」
実際、このデモの際、セントルイス市警は「Real Crime Center(RTCC)」と呼ばれる監視拠点(データセンター)を開設していた。ここには、ナンバープレート・リーダーや銃声を検知して位置を特定するセンサー、市内に設置された監視カメラなどの技術によって集められた情報が集約され、警察が利用していた。
« デジタル・デモクラシー ① | トップページ | デジタル・デモクラシー ③ »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- ポストコロナ医療体制充実宣言 ①(2024.01.04)
- Report 2023 感染症根絶 ④(2023.11.30)
- Report 2023 感染症根絶 ③(2023.11.28)
- Report 2023 感染症根絶 ②(2023.11.24)
- Report 2023 感染症根絶 ①(2023.11.15)