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2022年6月 6日 (月)

デジタル・デモクラシー~ロビイストから民主主義を取り戻す~⑥

続き:

  強固なロビー・ネットワークとしての研究者・機関

 多様で複雑化するロビー活動の影響の中で、最も懸念されているのが研究の独立性の問題だ。

 グーグルを筆頭に、ビッグテックはこれまでも多額の資金を研究者個人や研究機関、シンクタンクに拠出してきた。資金供給自体は責められるべきではないだろう。しかしEUで次々と重要な規制案が議論される中、研究者による技術の評価や社会的影響分析は今まで以上に政策に影響を与えるようになった。その際、ビッグテックの資金供与を受けた研究の独立性が問われているのだ。

 例えば、グーグルが資金供与をするシンクタンク「欧州国際政治経済センター」は、2020年12月に欧州委員会が発議したデジタル・サービス法案(DSA)及びデジタル市場法案(DMA)が実現すれば、「欧州全体のDGPは年間850億ユーロ(約11兆1300億円)もの損失を被る」との試算を公表した。これはいわば「脅し」の戦略だが、欧州委員会の競争総局の元チーフエコノミストのトンマーゾ・ヴァレッティ教授は、自身のツイッターで「馬鹿げた試算」と厳しく批判した。

 2010年代以降、ドイツやフランス、英国などの主要国では、グーグルが全面的に資金提供をする形で、新しい研究所やシンクタンクが設立されてきら。限られた研究費に苦戦する研究者にとっては魅力的であり、グーグルが世界中から集めたビッグデータにアクセスできるという「特権」が得られることもあるという。グーグルのロビー幹部が立ち上げから関与したこれら機関から、年間数百本の論文が世の中に送り出される。そこに資金提供者の「意図」がどれほど反映されたのかを計るのは難しいが、少なくともビッグテックから資金供与を受けた研究者・機関はその事実を公表すべきだとヴァレティは言う。

 「ビッグテックは、研究機関だけでなくシンクタンク、中小企業、スタートアップ企業、おして非営利のNGOにも資金供与することで幅広い学術ネットワークを形成しています。多くの組織が資金提供元を開示していないため、潜在的な利益相反の危険性が曖昧になっているのです。EU機関は、ロビー活動に関する制度を変更し、ビッグテックの力を制限する必要があります」(ヴァレッティ教授)

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