内の目外の目 第233回 「口腔バイオフィルム感染症」の保険導入の経緯とその意義 ②
続き:
◎口腔バイオフィルム感染症とこれまでの問題点
口腔内の汚染の原因の一つは、口腔内細菌の著しい増加であるが、これまでは細菌の量の測定を客観的かつ迅速に測定することができなかった。さらに、従来の歯科医療においては、口腔バイオフィルムの増加の結果として生じる歯周病の重症度を歯周組織検査等を通じてその存在を客観視し、スケーリングや機械的に歯面や歯肉粘膜の清掃を行うことで、口腔衛生管理を行ってきた。しかし、歯周組織検査を基本とする場合、無歯顎患者もいる一方で、患者のステージにおいては、歯周組織検査が行うことができない患者や検査そのものが意味をなさない場合もあり、汚染状況の診断のためには、直接的に口腔内細菌量を測定することが望まれてきた。
汚染状況の診断が客観的かつ迅速に可能であれば、口腔衛生管理の質の評価が可能で、口腔機能管理の PDCA サイクルを回すことが可能となる。口腔バイオフィルム感染症の診断と管理を適切に実施する必要があるため、この「口腔バイオフィルム感染症」の位置づけと口腔細菌定量検査法の導入が求められた。
◎口腔細菌定量検査法
口腔バイオフィルムに起因する疾患は、口腔内細菌の質(種類、有害性)と量(細菌の数)がその発症や重症化の原因だ。そこで細菌の「量」を測定する方法の確立が求められた。これまで口腔内の微生物を客観的に定量する際には、プラークインデックスのようなチャートを用いた方法や細菌の数を顕微鏡下で直接数える方法、光電比色計などを用いて菌液の濁り度を測定する方法、培地上に培養後にコロニーをカウントする方法などが知られている。
しかし、いずれも臨床家が迅速に測定できるものはない。今般、チェアサイドやベッドサイドで簡易にかつ迅速に細菌数を電気的に測定可能な口腔内細菌カウンタが利用できるようになった。
口腔細菌定量検査には、舌下部の唾液をサンプルとする方法と舌上の表面からサンプルを採取する方法がある。いずれも機器の希釈液 1mL あたりの細菌数で、バイオフィルム感染症を診断することになっている。
詳細については、日本歯科医学会「口腔バイオフィルム感染症に対する口腔細菌定量検査に関する基本的な考え方」を参照していただきたい。
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