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2022年6月10日 (金)

デジタル・デモクラシー~小農民の権利を奪うデジタル農業~ ②

続き:

   インド新農業法に反対する農民

 米国でのデモから約3ヵ月前の2020年9月末、インドでは政権にによる農業関連法案が可決・成立した。法案は「2020年農産物流通促進法」「農民保護・支援・価格保証及び農業サービス法」、そして「改正基礎物資法」の三つであり、纏めて「新農業法」と呼ばれる。

 新農業法に対しては、審議前から農民による反対運動が起こっていたが、拙速な審議で可決されると農民の怒りは沸点に達し、10月以降に反対運動に激化していった。11月末の段階で、全国で2億人以上が抗議デモやストライキに参加。新型コロナウィルス感染者が多数出ている中でも、30万人近くがデリーと周辺都市に結集し、同法の破棄・撤回を求めた。米国やカナダでのデモは、この巨大なうねりの中に連なる行動の一つなのだ。

 Facebook との関係を述べる前に、新農業法について簡単に触れる。同法の狙いは、農産物流通の自由化と農業セクターへの民間資本導入である。これまでインドの農民は、「マンディ」と呼ばれれ地域ごとの公設市場ではほぼすべての農産物を販売してきた。公設市場では政府が最低支持価格(MSP)を設定しており、一定の保護がなされてきたと言っていい。新農業法の中の「農産物流通促進法」は、農業改革の一環として規制緩和を行ない、農民が自州以外の市場やスーパー、食品会社などの民間企業にも自由に農産物を販売することを可能にする。モディ政権は、この改革は伸び悩む農民の所得向上につながるとアピールした。

 長年にわたりマンディで農産物を買い叩いてきた仲介業者を一掃しようとする意図もあった。ナレンドラ・シン・トマー農相は「新農業法は農産物の州間での取引を促進し、農民に幅広い選択肢を与える」とメリットを協調。

 しかし、提案の拙速さや事前の説明不足もあり、農民の多くは「最低支持価格による政府の農産物買入制度が廃止される」と理解をした。「誤解だ」と政府は必死になって説明したが、新自由主義的な政策を進めるモディ政権下の「改革」への農民の不信は根強い。実際、食品会社に対し交渉力のある大規模農家には、朗報かもしれないが、小規模零細農民にとっては、農産物を買い叩いてくる相手がマンディから食品会社に代わるだけで、農民間の格差もさらに広がると指摘されてもいる。

 経済学者たちは、「この法律が施行されれば、価格支持型市場は完全に消滅する」とし、多くの零細農家が廃業に追い込まれる危険性を指摘。

 こうした理由にから農民は一斉に反対し、警察との衝突も含めた空前の規模のデモがインド全土広がった。

 

 

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