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2022年6月14日 (火)

デジタル・デモクラシー~小農民の権利を奪うデジタル農業~⑥

続き:

   ギグ・ワークの拡大と地域の小規模商店の破壊

 ビックテックによる農業・食品ネットワークビジネスが引き起こす問題は、農業分析だけに留まらない。

 一つは、労働の問題だ。デジタル化を推進する側は、仲介人への依存を無くすことが農家の利益になると主張することが多い。インド農業新法でもこの点が強調され、農家の自由が宣伝された。確かに、新型コロナウィルスの感染拡大時に食品流通が麻痺すると、農家はSNSなどのデジタル・プラットフォームを独自に活用し、農産物を消費者に直接販売するという創造的な方法を見出した。農家の交渉力を強化するために、協同組合などがデジタル技術を利用する可能性も十分にあり得る。しかし、そのような肯定的なケースであっても、農家が生産した農産物を集め、流通させ、販売するという「中間」の仕事に従事する労働者は不可欠だ。世界の多くの地域で、その仕事は小規模販売業者や売り子が担い、食品は地域の小さな商店で売られている。

 デジタル・プラットフォームにおける労働問題は、ウーバーやアマゾン・メカニカルタークなどのギグ・ワーカー(雇用によらない、細切れで不安定な仕事)問題として顕在化しているが、農業分野でも「中間」を担う労働者(特に農業・食品業界では圧倒的に女性である)を不安定で無権利な状態に置くリスクががある。

 インド・デリーのシンクタンク「社会科学研究所」のアルン・クマール教授は、新農薬法に反対する研究者の一人としてワシントンポスト紙に対しビッグテックのビジネス・ネットワークへの懸念を語った。

 「農業分野に従事する労働者が、巨大企業の気まぐれに全面的に従属するギグ・ワーカーになりかねません。仕事とは人間に尊厳を与えるものです。もし人々が尊厳を持てなければ、社会的・政治的問題が噴出するでしょう」

 もう一つの問題は、地域の小規模商店への打撃である。多くの途上国・新興国では、食品の小売・流通は今も小規模業者に委ねられ、政府が卸売システムを規制している国もある。これらはアマゾンやウォルマート、アリババなどの巨大流通・小売企業にとっては「未開拓の市場」だ。

 例えばウォルマートは、2016年、インドのオンライン小売のスタートアップ企業「Jet.com」を33億ドルで買収し、インドへの進出を果たした。さらに2018年にはインド最大のオンライン小売プラットフォーム「Flipkart」を160億ドルで買収。インド市場での存在感を高めつつある。アマゾンもインドに進出しており、両社だけでインドのデジタル小売分野のシェアのほぼ2/3を占める。これら企業の拡大は、何百万人もの露店商、小売業者、「キラナショップ」(インドの日用品・食料品店街)、家族経営店に脅威を与えてきた。

 アマゾンのビジネスモデルは、顧客を自社プラットフォームに誘い込むために、競合他社への略奪的な価格設定をはじめ、不公平なビジネス手法を駆使するものだ。またアマゾンは加盟店の販売データを独占的に見ることができるため、人気商品の模倣品を作り、低価格で販売してきた。こうした「力の濫用」い依って、インドに限らず世界中で何千もの中小企業や小売店が廃業に追い込まれている。

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