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2022年6月12日 (日)

デジタル・デモクラシー~小農民の権利を奪うデジタル農業~④

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  ビッグテックの農業・食品ネットワークビジネス

 このように、農業生産と流通、小売りそして決済・ローン(金融)という、従来は別々のセクターの別企業が行っていた事業が、現在、驚くほどの速さで統合・再編成されている。それを可能としているのがアプリや電子決済システム、ビッグデータの収集と管理を支えるAI・アルゴリズムなどの技術などの技術だ。この動きは先進国途上国を問わず広がっている。

 「世界最大のIT企業や流通プラットフォームは、農業分野への参入を強めています。一方、農業・化学品メーカーも農業のデジタル化を目指しています。これらが同時に起こり、合併や資本提携、技術協力を繰り返しながら農業や農民をとりまくシステムが統合されて行っているのです」(図 略)。

 世界の小規模農家の権利と食料主権をめざし活動する国際ネットワーク「GRAIN」のカルティーニ・サモン氏は指摘する。

 その鍵となるのは、やはりデータ。ビッグテックや通信事業者、小売りチェーン、食品会社、アグリビジネス、銀行など大企業は、フードシステムのあらゆる場所からデータを収集し、そこから利益を得る方法を見つけようと競い合っている。しかも少数の大企業に権力は統合され、ビッグテックがフードシステムをより広く深く掌握してしまう危険があるとサモン氏は懸念する。

 例えば、マイクロソフトは、同社のクラウド「Azure」を通じて、「Azure FarmBeats」と呼ぶデジタル農業プラットフォームを構築している。このプラットフォームは、土壌や水の状態、作物の生育状況、病害虫の状況、天候に関するデータや分析を農家にリアルタイムで提供。しかしその基礎となるデータをマイクロソフト自身が持っていない。そこで同社は、農業用ドローンやセンサーの開発企業とタイアップして、これらの企業が集めた膨大なデータを手にしているというわけだ。

 一方、従来のアグリビジネス企業、特に種子、農薬、肥料を販売する企業は、ビッグテックが農業分野に参入する前から、デジタル農業に着目してきた。例えばバイエルは、自ら買収したモンサントとクライメート・コーポレーションの協力によって「クライメートフィールドビユー」というデジタル農業プラットフォームを立ち上げた。農家は、自分の農場での作物の生育状態、害虫の発生状況などのデータを、スマートフォンのアプリを通じて、日々バイエルに提供する。するとその引き換えに、バイエルは農家に必要なアドバイスを与えるという仕組みだ。同時に、アプリからはバイエルの農薬や化学肥料など製品広告や割引サービスの情報が送られてくる。このアプリは、すでに米国、カナダ、ブラジル、ヨーロッパ、アルゼンチン、の 2400万ヘクタール以上の農場で使用されているとしている。

 またBASF のザルビオ(xarvio) というアプリも、圃場の雑草、病害の状態を識別し、それらが問題になる時期を予測し、農薬散布や施肥の時期を農家にアドバイスする。

 しかし、これらアグリビジネス企業の弱点は、自社アプリの運用に必要なデジタル・インフラが十分にないため、アマゾン・ウエブ・サービス(AWS)のようなクラウド・サービスに依存せざるを得ないことだ。そのためアマゾンは、アグリビジネス企業に対して大きな優位性を持つことになる。こうして、農家に製品(農薬、トラクター、ドローンなど)を供給する企業と、データの流れを支配する企業間での競争と統合が進んでいるのである。

 

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