« Science 移植・再植から見える歯と歯槽骨の関係 ① | トップページ | Science 移植・再植から見える歯と歯槽骨の関係 ② »

2022年6月11日 (土)

デジタル・デモクラシー~小農民の権利を奪うデジタル農業~③

続き:

  Facebook とインド企業の協働

 新農業法への反対運動の動きは、インターネット上でも繰り広げられていた。SNSを使った情報発信やデモの呼びかけが続く中、Facebook は、同法に反対する内容のページを突然削除した。これに気づいた農民や市民がすぐさま同社に抗議をすると、そのページは復元され、同社は「削除は誤り」との弁明をした。しかし、農民たちの怒りは収まらない。あるページが削除され復活したということ以上の根深い問題があったからだ。

 新農業法に反対する人びとの間では、「Facebook は新農業法制定に深く関わっている」との疑念が持たれている。2020年4月、Facebook はインド最大の通信事業者であるリライアンス・ジオ・プラットフォームズに57億ドル(6100億円)を出資し、約10%の持ち分を取得すると発表した。同社は総合企業であるリライアンス・インダストリーズ(石油・ガス開発、小売、インフラ、バイオテクノロジーなどの事業を手がけるインド最大のコングロマリット)が保有する会社で、その筆頭株主は大富豪のムケシュ・アンバニだ。リライアンス・ジオ・プラットフォームズは、系列企業のリライアンス・リテイル(インド最大の小売りチェーン)と提携し、電子商取引サービスを計画していた。リライアンス・リティル社は、インドの食料品分野で40%のシェアを支配しているとされる。

 新農業法が成立すれば、同社は農民から直接農産物を買い取る最大手企業となり、利益の拡大が見込まれる。当然、提携するジオ・プラットフォームズ株主である Facebook にも利潤がもたらされる。Facebook は、自らの利潤の確保のために抗議のページを削除したのでないか――。そう確信した農民たちは、ジオのSIMカードを燃やしたり、「モディとザッカーバーグは、アンバニの操り人形だ」と書いたバナーを掲げるなどして、これら企業の「結託」を糾弾した。

 Facebook がインド市場から得られるのは、株主としての利益にとどまらない。同社が所有するメッセージやビデオ通話の無料アプリ「Whats App」は、インド5億人以上のユーザーがいる。新農業法によって農民がリライアンス・リテイル社に農産物を販売する際、支払は関連するアプリ「WhatsApp Pay」を使うよう指定される可能性がある。どの農家が何をいくらで販売したのか、また消費者はどの商品をいくらで買ったのかなど、多岐にわたる種類のデータを、一つのアプリを通じて、Facebook は収集できるようになるのだ。

 さらに、このアプリは、資金調達に苦しむ農家に高金利ローンを提供することもできる。約 14億の人口を抱え、多くが農業に従事するインドは、膨大なデータが得られる魅力的な市場だ。Facebook 以外の外国企業もインドへの IT 投資を加速させている。

 「農民にとっては、360度、全方位からの支配です」デジタル主権の確立をめざすインドのNGO 「変革のための IT (IT for Change)」のパルミンダ・ジート・シン氏は、新農業法の背後で進む動きをこう批判する。

 「リライアンス社はまだインドの食品・小売分野を完全支配しているわけではない。アプリも初期段階。しかし、アマゾンとウォルマートも同じように総合的なエコシステムを構築しようと動いてきました」と指摘する。

« Science 移植・再植から見える歯と歯槽骨の関係 ① | トップページ | Science 移植・再植から見える歯と歯槽骨の関係 ② »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事