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2022年6月21日 (火)

デジタル・デモクラシー~⑥

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  すすむ垂直統合と寡占化――広告代理店も支配下に

 こうした事例に対して、「これまでも広告を出す側の企業は、その仕組みを十分知らなかったし、知る必要もない。広告代理店に任せておけばよいのだ」とという意見が出ることは容易に想像できる。しかし今起こっていることは、そのように単純な分業論では解決しないほど深刻だ。何故なら、ビッグテックは従来の広告代理店をも飲み込み、より完全な支配と独占体制を築ぎ上げつつあるからだ。

 インターネット広告業界には、様々な機能と役割を果たす多様な事業者が存在してきた。しかしこの数年で、ビッグテックによる垂直統合化と寡占化が進んでいる。例えば Google は、圧倒的なシェアを持つ「検索サービス」を有するだけでなく、買収等を通じて、YouTube などの「媒体」も所有し、さらに広告主と媒体社(ウエブサイト運営)の間に入る「広告配信」(アドネットワークやアドエクスチェンジ)の機能も有している。さらには、利用者や使用するブラウザ (Google Chrome) も高いシェアを持ち、検索サービスを通じて利用者のデータ(閲覧履歴等)も抑えている。要するに、広告の入り口から仲介、出稿先の媒体迄のすべてをGoogle という一企業が掌握しているのだ。

 このような垂直統合と寡占化は、従来の広告代理店や広告仲介業者にも大きな影響を与えているのだ。これらの事業者は、広告主から出稿依頼を受け、それをメディアに提案し掲載するというのが従来の仕組みだが、代理店や仲介業者は現在の巨大な統合と寡占化のシステムの「蚊帳の外」に置かれ、従属させられているという構造になっているのだ。

 日本の公正取引委員会は、2022年3月に「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」を公表した。ここでは広告代理店や仲介業者と、デジタル・プラットフォーム事業者(Google' Facebook' Twitter' Line' Yahoo! )にヒアリングを行なっているのだが、代理店や仲介業者が置かれた支配の実態がじつに卒直に語られている。いくつか引用してみる。

 「当社は、あるデジタル・プラットフォーム事業者(以下 DP事業者)が大口の取引先で、売上高のうち半分程度を占めている。取引をやめると会社の存亡にかかわるため、DP 事業者からの要求には従うほかない」(広告仲介事業者)

 「DP 事業者は契約の締結に当たって一方的に内容を定めてくる。契約には私的自治の原則があり、基本的には、当事者間の合意に基づいて多少は不利な条件でも応じることはあると思う。しかし、デジタル経済の寡占化・独占化が進んでいる昨今、実質的に他の選択肢はないので、わが社に著しく不利な内容でも応じるしかない」(広告仲介事業者)

 「扱う広告が配信基準に満たさないと判断されて広告の配信を止められるリスクと常に隣り合わせである。配信基準の変更がいつ行なわれるのか分からないため、対応に苦慮している」(広告仲介事業者)

 「ある DP 事業者との契約では、何らかの障害が発生して広告が配信できなかった場合、当該 DG 事業者に対して損害賠償請求はできないという免責規定が設けられている。一方、当社に対しては DP 事業者が補償を求めることができるという規定があり、不公平だ」(媒体社・広告仲介事業者)

 「当社が代理店として運用していた広告が、アカウントの停止により全面配信停止となた。停止理由はセキュリティーや品質保持のためということであったが、それ以上何の説明はなく、どの広告が基準に抵触したのか分からないまま、月百万レベルで損失を被っている」(広告代理店)

 これだけでも驚くべき実態だが、他にも競合する他の DP 事業者との取引禁止や、費用の不透明性など、一般的な契約では考えられないような事例が数多く報告されている。そして大きな問題は、ここまで片務的で不平等な関係があるにもかかわらず、広告代理店や仲介業者も「他に選択肢がない」と泣き寝入りに近い状態になっていることだ。

 

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