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2022年6月 5日 (日)

デジタル・デモクラシー~ロビイストから民主主義を取り戻す~ ⑤

続き:

  自社メディア・広告を使用した版規制キャンペーン

 ビッグテックならではの強みを生かしたロビー活動・キャンペーンが、ネット空間で人々の心をとらえ、世論を動かす力にもなってきている。

 例えば近年、問題視されているのがネット上での「アストロターフィング(Astroturfing)」と呼ばれるロビー活動の一種だ。一見すると自発的な草の根運動だが、実は背後にいる企業や組織の主張を代弁させる手法で、「人工芝運動」や「偽の草の根運動」などとも言われる。一つの例を紹介しよう。

 「あなたのビデオが見られないインターネットを想像してみてください。お気に入りのクリエイターがいない、新しいアーティストを発見できないインターネットを想像してみてください。お気に入りのクリエーターがいない、新しいアーティストを発見できないインターネットを想像してみてください。このすべてがヨーロッパで現実となる可能性があります」

 これは、2018年に欧州各国に広がったキャンペーン「#SaveYourIternet(あなたのインターネットを守ろう)」のメッセージだ。当時、欧州議会では著作権の保護強化に関するEU著作権指令が議論されていた。このうち第13条は、プラットフォーム企業に対し、コンテンツ中の著作権法の厳格な適用と著作者への公正な報酬の責任を負わせる内容だった。これまでTou Tube は、報告されたコンテンツのみをブロックする必要があったのだが、この条項により、You Tube が著作権で保護されたコンテンツかどうかを確認し、発生した価値の公正な分配を著作権者に支払わなければならなくなる。

 これに対し You Tube は、数百万人規模のユーチューバーを動員する作戦に出た。You Tube はキャンペーンに使う画像等の「コミュニケーション・ツールキット」を無料で提供。しかもそれらは欧州全域で拡散されるように 6 カ国語(英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ポーランド語)で用意されているという周到ぶりだった。著作権を適切に守るためプラットフォーム企業に責任を課す目的だったEU指令は、「表現の自由を奪うEUの権威主義」と読み替えられ、多くのユーチューバーが何百本もの動画を投稿。「第13条をつぶせ!」というスローガンがネット上で広がり、欧州議員の元には何千ものメールや tel が殺到した。

 第13条をめぐっては、欧州議員の中でも賛否の議論が起こっていた。規制と表現の自由のバランスをどうとるか、技術力の無い新規参入企業が排除されないかなど、様々な論点がある。しかしそうした議論を飛び越え、単純なメッセージで指令をつぶそうとするやり口に、議員やEU機関関係者は怒りをあらわにした。欧州議会で社会民主進歩同盟(S&D)に属するヴィルジニー・ロジエール議員は、「反・著作権指令キャンペーンでは、無数のユーチューバーが最強のロビイストになったのです。You Tube' つまりグーグルは、プラットフォーマーとしての責任を回避するため、支配的な地位を濫用してユーチューバーを操り、巧妙なキャンペーンを仕組みました。公然とロビー活動を”外注”しているようなものです」と語る。

 SNS での発信力を買われてロビイストに抜擢された政治家もいる。Facebook は、欧州でのロビー活動の代表として英国出身のオーラ・サラ氏を雇用した。彼女は、中道右派の政治支持者と、SNSを利用する若者世代をターゲットに、インスタグラム(Facebook が2012年に買収)で盛んに発信する。エクササイズバイクやピラティスの写真とともにGAFAへの規制をやんわりと批判するストーリーを書き込むのだ。これには高度なテクニックが必要だが、ミレニアル世代である彼女は難なくやってのける。個人情報の漏洩や市場独占などで失墜したFacebookの評判を修復し、欧州の政策立案者たちの規制の手を緩めることが、彼女の最大かつ喫緊の仕事なのだ。

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