デジタル・デモクラシー~ロビイストから民主主義を取り戻す~④
続き:
ロビイストの多様な戦術
実際、ビッグテックたちはどのようにして欧州の政策立案者に影響を及ぼしているのだろうか。
欧州には、欧州議会と欧州委員会が管理するロビイスト登録制度「EU透明性登録簿」がある。外国企業・団体を含むロビー団体が登録し、費用や欧州議会・欧州委員会メンバーとの面談回数、ロビイストの人数などを申告する(一部のみ義務化)。2021年8月時点で登録されているロビー団体は1万2564団体。このうちEUのデジタル経済政策にロビー活動を行うのは約600の企業・ビジネス団体とされ、日々、EU機関が集中するブリュッセルにて活発に動いている。
財界と議員・EU機関(欧州委員会、欧州議会、EU理事会)の間での転職は「回転ドア」と呼ばれ、伝統的なロビー活動の一つだ。他の産業同様、ビッグテックとの回転ドアは回り続けている。
GAFAのロビー活動を調査する米国の市民団体「技術の透明性プロジェクト(Tech Transparency Project:TTP)」によれば、2006年以降の10年間で、グーグルはEU機関から少なくとも65人を雇用している。逆に、グーグルからEU機関や各国政府機関などに少なくとも80人が転職をしている。例えば、2010~15年に英国の副首相を務めたニック・クレッグ氏は、2018年に Facebook に転職し、国際問題担当バイスプレジデントの役に就いた。欧州議員を務めたこともある氏は、英国内だけでなくEU機関にも広い人脈を持つ。クレッグ氏は、ケンブリッジ・アナリティカ事件が発覚し、同社が米国連邦議会で激しく追求されていた丁度その徳、同社に転職した。この際、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は「クレッグ氏の政治力に期待する」と公言しており、実際、2021年に元従業員のフランシス・ホーゲン氏が「Facebookはユーザーの安全より利益を優先している」と内部告発すると、クレッグ氏は彼女の主張を「ばかげた言い分」などと非難、TVやニュースペーパーでFacebook擁護の論陣を張り続けてきた。
グーグルも、欧州議会、英国大使館スペイン法務省、ポーランド経済省、NATOに至るまで、欧州各国から戦略的に採用を続けている。グーグルのCEOや会長を務めたエリック・シュミット氏のように、英国のビジネス諮問委員会に任命されるケースもある。
1994年以来、英国労働党の国会議員を務めるマーガレット・ホッジ氏は、企業のロビー活動を長年見てきた経験から次のように述べている。
「戦略的な雇用は、公共圏での影響力を得ようとするグーグルのビジネスモデルにおって不可欠な要素です。グーグルは意図的にそうした文化を育んでおり、政府にできるだけ近づくことが重要であると考えています。逆に、政府関係者はグーグルに“畏敬の念”のようなものを抱いていることも事実です。
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