デジタル・デモクラシー~ロビイストから民主主義を取り戻す~ ③
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2010年8月、ベルギー・ブリュッセルに拠点を置くNGO「欧州企業監視(Corporate Eurpe Observatory,CEO)」とドイツのNGO「ロビー・コントロール(Lobby Control)」は、「ロビー・ネットワーク:EUにおけるビッグテックの影響力の網」とタイトルした調査報告書を発表した。両団体はEUでの大企業の行動を調査し是正を求める「ウォッチ・ドッグ(番犬役)として広く知られる。
同報告書によれば、2020年、GAFAM五会社のロビー費用はトータルで約2280万ユーロ(約30億円)だった。米国と比べれば半分以下ではあるが、自動車産業や製薬、化学品など旧来の大企業を押さえ、圧倒的な存在感を示している。しかも、注目すべきはビック・テックのロビー費用がこの10年足さずで急増していることだ。
調査の中心メンバーのマックス・バンク氏(ロビー・コントロール)は次のように指摘する。
「欧州でビッグ・テックのロビー費用が増加している理由は、もちろん、EUがGAFAM規制案を次々と出しているからです。EUが規制案を提起する動きを見せると、GAFAMがロビー活動を強めるという動きが顕著です」
ビッグテックとEU主要機関との攻防は2010年代から始まっていたが、明確なターニングポイントは2015年だとバンク氏は言う。2015年5月、EUは域内のデジタル市場を統合し、公正な競争ルールの下での人、モノ、資本、サービスの移動を目指す「デジタル単一市場(DsM)」戦略を発表した。加盟国間で異なる法律、制度、通信環境などを整備し、統一ルールを作ることでデジタル経済を成長させようというものだ。背景には、GAFAMや中国のBATに欧州市場が席巻されつつあることへの警戒・対抗意識があった。DSMには、個人データや消費者保護の強化、GAFAを想定した反トラスト競争調査、オンライン・プラットフォーム(検索エンジン、SNS、アプリ・ストアなど)の包括的な分析、さらにネット上の違法コンテンツへの対処など、幅広いルール化が盛り込まれた。
GAFAMにとっては、これまでのビジネスに変化を強いる政治の側からの「攻撃」に他ならない。何らかの手を打たなければ危機感が急速に広がった。これを裏付けるように、2015年からの各社のロビー費用は増加の一途だ。例えばグーグルは、2014年の350万ユーロ(約4億6000万円)から2020年の575万ユーロ(約7億6000万円)と約1.6倍の増加。Facebookは2015年の70万ユーロ(約9300万円)から2020年の550万ユーロ(約7億3000万円)と実に8倍近くの増額。申告されないロビー費用も含めればこれらの額はさらに膨張していく。
「ビックテックのロビーの特徴は、金額の大きさだけではなく、少数のGAFAへの集中です。しかも経済力の集中だけではなく、EUの政治プロセスをこれまで以上に支配する傾向がある。これほどの巨大なロビーパワーは、他分野ではかって見られませんでした」(マックス・バンク氏)
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