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2022年6月 8日 (水)

デジタル・デモクラシー~ロビイストから民主主義を取り戻す ⑧

続き:

  公共の利益、民主主義に基づくテクノロジーを

 ロビー活動とは、政治家や政治関係者に働きかけ、自らが望む政策を実現させようとする取り組みをいう。その主体は企業に限らず、労働組合や消費者団体、環境や人権など様々なテーマで活動するNGOも含まれる。ロビー活動は正当な民主的メカニズムであり、多様な主体の働きかけによって議員や世論の視点を豊ることもできる。一方で、ロビー活動には、経済力を持つ者が圧倒的優位に立ち、それ以外の者を駆逐してしまうという本質的なリスクがある。

 いま起こっている問題は、まさにそのリスクが現実となっている状況だ。先に述べたCEOとロビー・コントロールの報告書によれば、DSA・DMA法案を起草する欧州委員会が2020年に同法案に関して面談した271のロビー団体のうち、80%は企業・業界団体で、市民社会の組織は僅か20だった。政策を訴える以前に、政策立案者に会うこと自体に圧倒的なハンディがあると言わざるを得ない。この状態を放置すれば、人々の権利や安全、社会的公正などの価値にもとづく公共政策は、企業の利益の前に歪みられてしまう。

 こうした危機感から、欧州ではCEOやロビー・コントロール、トランスペアレンシー・インターナショナルなどの市民社会組織が、ロビー活動の透明性の向上と規制の強化を求める運動を粘り強く続けている。例えば、透明性登録簿の強化(完全義務化)やシンクタンク・研究機関の資金源の開示義務化、回転ドア規制の強化と独立した倫理委員会の設置などだ。逆に、より広範な人々の声を代表する中小企業、市民社会組織、独立研究者、地域団体とEU機関関係者の対話を増やすことも提案している。

 「明らかに、現在の力関係は間違っている。ビッグテックは政治への特権的なアクセスを持ち、経済・社会全体でますます優位に立つようになった。ロビイストがテクノロジーの未来を作ることがないように、人々が政策議論に参加することが重要だ。そして、これはブリュッセルだけでなく、世界の多くの政治中枢機関で同時に起こっていること。東京も同じでは?」

 バンク氏の指摘はまったく正しい。日本には米国やEUのようなロビー団体登録制度がなく、全体像はかなり見えにくいが、テック業界は日本の規制当局に対しても日々働きかけをしている。

 2021/01/14、かねてから総務省の有識者会議で検討されてきた電気通信事業法の見直しの一環として、「ネット広告規制案」が議論されたが、事業者団体の反対で大きく後退した。この規制案は、パソコンやスマホからの購入履歴や Web の閲覧履歴、位置情報などの「利用者情報(データ)」を広告主などの第三者に送信する時、利用者の事前同意を義務付ける内容だった。私たち利用者にとっては安心につながる規制であるが、IT関連企業からなる「新経済連盟」と在日米国商工会議所(accj。GAFAはじめ米国のビッグテックも多数加盟)を中心に業界団体は猛反発。事前のロビー活動も展開されたことで規制は骨抜きになった。規制に産生する消費者団体などの声は、少数意見として切り捨てられた。欧州で起こっていることと構図は全く同じ。

 ワシントンで、ブリュッセルで、東京で――。私たちは、ビッグテックのロビー活動という要塞を解体し、公共の利益と民主主義、法の支配にもとづくテクノロジーの可能性を、それぞれの場所で創造し、統治していかねばならない。

 

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