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2022年7月28日 (木)

デジタル・デモクラシーキッズ・テック―狙われる子供たち ⑧

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フランスでは、若者の摂食障害が深刻な社会問題となっており、2017年、女性を守るための 2つの法律(国内でモデルとして働く際に健康的な体型と体重であることを証明する医師の診断書を必要とする法律、モデルの写真にデジタル修整を施した場合は「レタッチトフォト(加工写真)」と明記することを義務づける法律)が施行された。

 このような法規制がない場合、各国や国際団体、業界はガイドラインや個別企業の自主規制によって子供への広告規制を進めてきた。例えば、消費者保護及び執行のための国際ネットワーク(ICPEN)は、2020年に18歳未満の子どもに対するオンライン・マーケティングに関する基本原則を発表。マーケティングであることの明示や子どもの特性への配慮、子どものデータ収集や利用、不適切な商品やサービスに対する注意を促す内容だ。

 英国では2017年に広告の自主規制組織の広告慣行委員会(CAP)が、12歳未満の子どもをネット広告から保護するための手引きを発表し、子どもが商業的な意図を持った広告を識別できるように適切に明示し、情報開示をすることを規定している。

 しかし、自主規制だけでは改善を期待することはほぼ不可能。先の UNICEF、WHO、ランセットなどからなる委員会レポートの著者の一人であるアンソニー・コステロ教授は、述べている。

 「業界の自主規制は失敗した。豪州、カナダ、メキシコ、ニュージーランド、米国などにおける研究は、自主規制では子どもに広告を届ける商業的能力は妨げられていないことを示しています。オーストラリアの自主規制に業界が署名しているにもかかわらず、子どもや若者の視聴者はたった 1年間で、TVで放映されたサッカー、クリケット、ラグビーを見ている間に 5100万件のアルコール広告に晒されていました。現実はさらに悪い状態かもしれません。というのも、子どもをターゲットにしたソーシャルメディア広告やアルゴリズムの大幅な増加に関するデータや数字がほとんど手許にないためです」

 実は米国では、1970年代以降から活発な消費者運動がTVや雑誌など旧来メディアにおける子どもへの過剰で不健康な広告に対し、規制を設けるための運動がねばり強く進められてきた。例えば1974年設立の「子ども広告審査ユニット」(CARU)は、子ども向けの広告についての自主規制プログラムを策定し、12歳未満の子どもをへの広告やマーケティングを自主的に審査・規制。

 これらの運動は、急速拡大するデジタルマーケティングお世界での広告問題に改めて照準を合わせ、業界や企業に対し拘束力のある法規制を求めるようになった。1998年には「児童オンライン・・プライバシー保護法(COPPA)」が施行、13歳未満の子どもをターゲットにしたマーケティングが禁止されるようになったが、法の主な目的は個人情報保護であり、適用される企業の範囲も限られているため不十分だとジェフ・チェスター氏は言う。

 「公衆衛生の専門家や規制機関が、子どもや若者へのマーケティングについて科学的根拠に基づく明確なガイドラインや規制を制定しようとすると、食品業界と広告業界は、それをうまくかわすためにその影響力のすべてを展開しました。そうやってこれら企業は、世間や政府の監視の目をかいくぐってきたのです」

 一方、米国では子どものプライバシー侵害をめぐる訴訟も起こっている。2019年、Google およびその傘下の YouTube は保護者の同意なしに子どもの個人情報を違法に収集したとして米連邦取引委員会(FTC) に1億7000万ドルの和解金を支払い、その後 YouTube で子ども向けコンテンツに関する新ルールを展開した。

 企業の動きにも少しずつ変化がある。食品・日用品大手のユニリーバは小児肥満の問題解決に寄与するため、2020年に子どもを対象にした食品の広告・マーケティングを中止することを発表。伝統的なメディアでは12歳未満、ソーシャルメディアでは13歳未満を対象にした広告を取りやめ、広告にアニメキャラクターを使わず、12歳未満に訴求力のある著名人やインフルエンサーを起用しない方針を打ち出した。子どもたちをターゲティング広告から守るための取り組みは加速している。

 

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