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2022年7月 5日 (火)

Science ~肺炎球菌は口腔レンサ球菌の遺伝子を取り込んで耐性化する~①

山口 雅也(大阪大学大学院歯学研究科准教授)さんと、川端 重忠(大阪大学大学院歯学研究科口腔細菌学教室教授)さんの共同の論文を載せる。

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はじめに

 肺炎による死亡率は、日本において緩やかな上昇傾向にある。2011年に肺炎は日本人の死因の第 3 位になった。その後、2017年に誤嚥性肺炎が死因として肺炎と区別されたため、肺炎による死亡率は第 5 位まで低下したが、誤嚥性肺炎と併せた死亡率は2019年まで上昇傾向にあった。2020年は、前年比較して誤嚥性肺炎の死亡者数が2361人増加した一方で、肺炎の死亡者数は17068人減少したために、総数はていかした。

 要因として、新型コロナウイルス感染症対策によるマスク着用の増加、手指消毒の励行、人流抑制などが考えられる。コロナ対策解除後は再び死亡者数が増加に転じる恐れがあり、注意が必要である。

 肺炎は日本呼吸器学会の定めたガイドラインにおいて「肺実質の、急性の、感染性の、炎症」と定義され、発症の場や病態から、市中肺炎、院内肺炎、医療・介護関連肺炎に大別される。院内肺炎と医療・介護関連肺炎の多くは誤嚥性肺炎である。

 市中肺炎は、基礎疾患を有しない。または軽微な基礎疾患の人に起こる肺炎で、院内肺炎および医療・介護関連肺炎は、何らかの基礎疾患を有し医療や介護の対象となっている人に起こる肺炎。一般的に、市中肺炎では肺炎球菌がもっとも高頻度に分離される。

 一方で、院内肺炎および医療介護関連肺炎では、黄色ブドウ球菌や緑膿菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌がなどが高頻度に検出。さらに、院内肺炎および医療介護関連肺炎では、市中肺炎と比較して薬剤耐性菌の頻度が高いとされている。特に肺炎球菌は、WHO が2017年に公表した「新たな抗菌薬開発の緊急性が高い薬剤耐性菌 12 種類」のうちの一つであり、グローバル規模で耐性化が懸念されている。

 肺炎球菌に対して、日本では高齢者用として 23 価莢膜多糖体型肺炎球菌ワクチンが、小児と高齢者用として 13価蛋白結合型肺炎球菌ワクチンが許可されている。ワクチンの導入により肺炎球菌性肺炎の症例数は減少傾向にある。

 一方で、ワクチンに含まれる莢膜型の菌株が排除される選択圧が生じた結果、ワクチンに含まれない莢膜型菌株の分離頻度が上昇する「血清型置換」の問題が生じている。

 近年の研究の結果から、肺炎球菌は口腔レンサ球菌から遺伝子を取り込むことで、薬剤耐性化や血清型置換を引き起こしていることが明らかになってきた。本稿では、肺炎球菌が口腔レンサ球菌を巧みに利用して進化するメカニズムについて概説するとともに、我々の研究室で行っている肺炎球菌の進化に対抗した薬剤標的の探索戦略を紹介する。

 

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