人間と科学 第336回 転換期を迎えるエネルギーシステム(3)― 1
全体像を見失わないための視座
黒住 淳人(京都外国語大学・京都外国語短期大学副学長)さんの小論文を載せる:コピーペー:
まずは、エネルギー・トリレンマを取り上げる。
エネルギー安全保障(以下 「エネルギー安保」)、経済効率性、環境適合というジレンマならぬトリレンマ(三重苦)が政策当局を悩ませてきた。
国の諸事情や時代の趨勢に応じて各要素の意味合いや優先度も変化する。本連載334回で論じた脱炭素を目指す動きは、環境のプレゼンスの世界的な高まりを反映したものといえる。しかし他の 2 つ (経済効率性、地球の環境適合) の重要性が低下しているのかいうと、必ずしもそういうわけではない。エネルギーを安定的に確保・供給するエネルギー安保については、これまでも触れてきたように、ウクライナ情勢に伴う様々な動向でもクローズアップされてている。 英エコノミスト誌も、表紙およびメイン記事で「Power Play : 世界のエネルギー産業は変革を迎えているが、エネルギー安保問題は続く」(2022年3月26日号)としている。
第一次石油危機を機に設立された IEA (国際エネルギー機関)は、石油を中心としたエネルギー安保のための協調の場となってきた。加盟国には90日分以上の石油備蓄が義務付けられており、協調取り崩しで市場安定化を図るのもその一環だ。今では、石油に加え、天然ガスや電力ほこにも範囲を広げ、より包括的に見据えている。
国単位では、必要なエネルギーを国内で賄っている割合(エネルギー自給率)がエネルギー安保の一つの指標になる。但し、各国が抱える条件は多様であって、様々なアプローチで対処している。化石燃料のほとんどを輸入(石油はそのうち90%を中東から)に頼る日本は、輸入先の多様化、エネルギー効率の向上に務めてきた。欧州各国にとっては、ロシアに多くを依存する現状からの脱却が課題となっている。
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